第7話 中指が長いのは何か握った時の力のバランスのため
「あんた誰ぇ? うちの畑でなにしてんのよ?」
俺にそう聞いてきたのは黒髪のポニーテールの女の子。服装は農業でもするのだろう、作業着である。なぜか右手には鎌を持っていた。
作業着って可愛い子が着るとある意味ファッションみたい。葵さんといい、可愛さ保てるのが凄い。
見た感じ中学生っぽい。身長は160もないといったところ。いや155くらいかな。どっちにしろちっさいな(笑)
「ちょっと聞いてんだけど」
可愛らしくポニーテールが左右に揺れる。思わずそっちを見てしまう。
「ああ、ここの畑の持ち主に雇ってもらっている高橋 和馬です」
とりあえず安定の敬語で話そう。
「はあ? なにそれ。私そんなこと聞いてませんけど?」
俺も知りません。貴方の名前も、中村さ(おじ)んと何の関わりがあるのかも検討つきません。
「あんた泥棒なんでしょう? そんな嘘ついたって無駄よ! 私には騙せないわ! さあキャベツ返して! ほら早く!」
バイト野郎は今まで草むしってたんだが。
「あのですね、今まで頼まれてここの畑の草むしりをしていたんです。勘違いですよ」
だいたいなんなんだこの子。たぶん中村家の人じゃないだろう。確認したこと無いが、雇い主と真由美さんと葵さんの三人家族のはずだぞ。3回バイトしに中村さんの家に行って、こんな騒がしい子が居たらさすがに俺でもわかる。
まあ証拠としてさらに事情を話せばいいか。俺は何も間違ってない。間違ってるのは頭ごなしに俺をキャベツ泥棒扱いするこの子が悪い。
「ほら見てくださいこの畑の綺麗さ。葵さんに草むしりを教わったおかげで草ひとつ残さない出来栄え」
俺は両手を広げ綺麗になったキャベツ畑を紹介する。
「
と、言いながらこちらへ近づいてきたポニーテール娘。
あっ! そこ土がぬかるんでるとこ! 足埋まって転倒でもされたらせっかく綺麗にしたキャベツ畑に突っ込んじゃう。
「そこ危な――」
「きゃっ!?」
案の定、ぬかるみに足を沈ませた彼女はこちらに倒れる。俺も近かったからか受け止めようと手を伸ばす。.........大丈夫、キャッチできた。
「ふう......セーフ。服、汚れちゃうとこでしたね」
「あ、あ、あああんた」
声を震わす彼女。そんな転びそうになったくらいで驚くことないでしょ。俺は倒れかけた彼女の体を押し返そうと思い、腕に力を入れる。自力じゃ、このぬかるみからを出すの大変だしね。
というかなんかふにふにという感触が手に感じるんだがこれは............。
「っ!!」
赤面する彼女。
..................これあれだ。俗にいうラッキースケベだ。なんつうものキャッチしてんだ俺。
「こ、この変―」
「ストーップ!!」
俺は思う。ここで理不尽による事故を主張するのは良くない。今までハーレム系のアニメとか漫画見てていつも思うんだ。「誤解だ!」と否定するのはちがうぞ! こういう時はな、誠意をふんだんに使った謝罪が必要なんだ。そう、だから俺は―――
「ごめんなさい! 悪気はありませんが、おっぱいに触ってしまい、本当に申し訳ありませ――」
「死ねこの変態!!!」
「へぶっ!」
はい、ダメでした。
彼女がグーで俺の頬を殴る。精一杯の謝罪は意味をなしませんでした。
痛てーな、くそう。俺だって出来るなら大きい方がいいよ! まな板触って殴られるのはもう自損だよ! ありがとうございますね!
「ふ、ふんっ! とりあえずパパに確認しなきゃ」
特に攻め立ててこないあたり、支えてもらった自覚があるのかポニ娘(ポニーテール娘)。なら殴ってごめんなさいとか、貧相な胸してごめんなさいくらい言ったらどうなのかね君。奥歯痛いよこっち。
腑に落ちない俺は過ちを犯した自分の手を見て、
「そもそも本当に...」
「ぶっ殺すわよ!!」
ボソッと言っちゃった俺。たしかに実際柔らかかったけど、彼女の反応でおっぱいて思っちゃっただけかもだし。確認のためもう一度いいですか? なんて言ったらバイト野郎とポニ娘の格闘戦が勃発してしまう。このまま水に流そう。
「お疲れ。ごめんね、遅れちゃった。ってあれ
やっと雇い主が迎えに来てくれた。これで俺がキャベツ泥棒の疑いが晴れる。俺はそう思って安堵したが、どうやらまた一波乱来そうである。
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