第2話 これが恋なのか!?
アルバイト初日からみかん殺しというレッテルを張られた俺は、ただでさえ静かな車内で更に重い空気を作ってしまった。
俺が無知なばかりに数本のみかんの苗木が無駄となってしまったのだ、ほんとごめんなさい。
でもね、中村さんも事前に「ここにある苗木は切らないでね」て言わないのもいけないと思うんだ!
「ま、まぁしょうがない。次から気を付けようね」
「ほんとすみませんでした」
くそう。普通わかんないよ、「これはみかんの苗木だね、うんうん切らないようにしよう!」なんてならないよ。しかも切った内の数本は草むらに埋もれて見えなかったし。
あーこの人とやっていけるだろうか。いや人間関係云々というより、こちらが迷惑をかけてしまい、却って仕事を増やしてしまいそうだ。
このバイト諦めたほうがいいかな。バイトはやる気があればできるって言ってた過去の和馬君を殴りたい。やる気じゃ知識差は埋まらないね。
やはりこういう仕事は予めしかっりとした“知識”が備わってないと中村さんの“常識”についていけない。
うーん、せっかくの初バイトを1日の、しかも3時間だけで諦めるのは早計だろうか...。
あれこれ考えているうちにある家に着いた。建物が3つあり、西と東に1軒ずつでこれらは昔ながらの木造建築、もう一つはどこにでもある招き屋根が特徴の比較的新しい家である。
「ここが中村楽園だよ」
なんすか中村楽園て。
「3軒あるんですか?」
「いや、西の家...そうだな“タクゾー”は使ってない。家というより物置だね。南と東にある家を気分で使い分けている」
気分で2軒使い分けてるとはめったに聞かない言葉である。金持ちか。いや偏見だけど農家って金持ちのイメージあるな。
っつうか、西の家“タクゾー”て言うんだ。男性の名前みたい。一応覚えておこう。
「父さん、草刈り機知らない? “鳥町”で使いたいんだけどなく....て?」
西の物置ことタクゾーからどえらい別嬪さん出てきて俺と目が合った。さっき直売店であった美人さんだ。
「こんにちは、さっきお店に来てくれた人ですよね?」
と、美人さんが言う。こんな眼鏡を覚えてくれたとは。
「はい、そうです」
と、味気ない返事のバイト野郎。
くっそ。これだからコミュニケーション能力が著しく欠如している自分が嫌いなんだ。人は第一印象が大切なのに! 伊達に彼女いない歴=年齢の俺じゃない。...ぐすん。
「...初めまして
「高橋 和馬です。今日初めてアルバイトに来ました」
中村(?) 葵さんは黒髪のロングで作業着を着ているが首から上でわかる真っ白な肌はとてもじゃないが農作業しているとは思えないくらいだ。
また泣きぼくろが年上の、なんというか大人な女性という印象で魅力的である。身長は......たぶん一緒じゃないよな。結構気にするんだよ、異性の身長差って。
あと作業着のせいだろうか二つの豊満な双丘に思わず凝視してしまいそうである。ガン見するのは紳士として恥ずべき行為、できるだけ見ないようにしよう。
「ちょっ、父さんこっち来て!」
中村(父)は葵さんに少し離れたところへ連れていけれる。
「今日バイトの子が来るって重要なことなんで言わなかったの!?」
葵さん、離れても大声出したらここまで話が聞こえますよ。
「いや、だって今日急に直売所に来て言われたんだもん」
「え、じゃあ母さんにも言ってないの?」
「う、うん」
「まずいよ」
「まずいか」
あなたは俺に仕事させている間一体何をしてたんですか? そこは家族会議ですよ。まぁ、十中八九アポ無しで来た俺が悪いが。
「呼んだかしら?」
「ひゃうっ!」
大の大人でも驚くとこんな声が出るらしい。
「あらあら、どなたかしら?」
「初めまして高橋 和馬です。今日初めてアルバイトに来ました」
「初めまして真由美です........あなたまたやったわね」
真由美さんは葵さんの母であるから美人さんなんだろう思ってて正解だった。同じく黒髪だがカジュアルショートである。
美人な奥さんじゃないですか。怖そうけど。というか“また”とは。
これから家族会議らしい。さて俺のこれからはどうなるんだか。願わくば、解雇していただけると諦めがつくのだが...。
ちらっと葵さんを見た。あっちも俺を見てたらしく、微笑みかけてくれた。
き、綺麗だ。まさか、そうか。これが、これがあの........恋なのか。
ふぅ........雇ってください!!!!!!!!
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