第175話


そしてそのキレイな目から涙がポロポロ溢れてきた。


「えっ? 何っ? 俺なんかまずいこと言った?どうしよう! ごめん! 忘れて! ほんとにごめんなさい!」


「おじいさんの名前…和夫さん…?」


今度は俺が驚いてしまった。


「うん。岩崎和夫だよ。この街の施設にいるんだ。」


「そうだったの…。」


ノエルの涙はしばらく止まらなかった。


さっき会ったばかりなのに、俺にはどうしてもこれが初対面だとは思えなかった。


俺はこの子の事を知っている。


この子は絶対に夢に出てきたあの由紀子だ。


そうだとしか思えない。


でも、ノエルに俺の見た夢の事を言うのは、さすがに頭がおかしいと思われる気がして、言い出せなかった。


俺はノエルをじっと見つめていた。


ノエルの震える肩を見て、抱きしめてあげたいと思った。


彼女が泣いているのは、もしかしたら…、なんとなく悪い予感がしてきた。


ただ、ノエルがうちのじーちゃんの事を知っていたのは、澄子さんもじーちゃんに会いたいと思っていたんだろうと思った。



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