第146話


 初めに駅の宝を探すことにした。この駅は今工事中で、もうじき建った当初の姿に戻るらしい。


工事前の古い感じが好きでその姿が無くなるのは残念な気持ちもあったけど、大正時代に始めてこの駅を見た当時の人たちと同じ感動を味わえるのかと思うと、工事が終わるのが楽しみでしかたがない。


私は座標の示す水飲み場の周りを探した。


水飲み場そのものには、どこにも宝箱は無かった。


その後ろに洗面所があって、そこの壁にランプがついてあった。


ランプの後ろを探すと、壁に取り付いている板の窪みに宝箱を見つけた。


宝箱を手にとって、ベンチに座ってノートに名前を書こうとすると、突然頭の中でまたあの男の人の声がした。



 由紀子! 必ず君の元に帰ってくる。



その声に胸が急に痛くなった。


そして動悸が激しくなった。


突然自分の意思とは無関係に涙がボロボロ流れ出てきた。



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