第139話
その時ドアが開いて、私の両親が部屋の中へ入ってきた。
「母さん!」
「お義母さん!」
二人は祖母の意識が戻ったことを喜んだ。
「ノエル、夕べからずっと付き添ってくれてたんでしょ?疲れてるだろうから、一度帰って休んでちょうだい。あなたの体の方が心配だわ。」
祖母がそういうので、私は家に帰ることにした。
「ちょっと休んだらまたすぐ来るから!」
私がそういうと、祖母は少し困ったような嬉しいような顔をしてみせた。
私はまっすぐ家に帰るつもりは全くなかった。
祖母の為に何か願掛けのような物をしたかった。
ふと、四葉のクローバーを見つけて祖母にあげようと思った。
私はクローバーが生えてそうな草むらを探した。
しばらく探すと、それは見つかった。
四葉のクローバーを摘むと、突然体中に電気が走ったような強い衝動が駆け抜けた。
頭の中に見たことも無い景色が走馬灯のように流れたかと思ったら、見たことも無い、だけどとてもよく知っている男の人が私の事を「由紀子!」と呼んだ。
その幻影は一瞬で無くなった。
私の心臓の鼓動は信じられないくらい速くなり、壊れてしまうんじゃないかと思うくらい激しく打った。
何故か涙が止まらなくて体が震えて、しばらくその場から動けなかった。
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