第110話


 私はハアハア言いながら飛び起きた。


まただ!


またあの悪夢だ!


額には汗をかいている。


心臓がまだバクバク言っている。


私はいつの頃からか分からないが、昔からこの同じ夢を何回も見る。


夢の内容が抽象的過ぎて何なのか全くわからないけど、私にとってこの夢は恐怖でしかない。


夢から覚めても恐怖が私を襲ってくる。


夢は私にとって呪いのような物だった。


子供の頃は、この夢を見ると必ず祖母の部屋のある離れに走って行って抱きついて泣いたものだ。


自分の住んでいる母屋から祖母の部屋のある離れに繋がっている渡り廊下を無事抜けることが出来たら私は安全圏に入った、と子供心に信じていた。


祖母が頭を撫でて「大丈夫よ、それはただの夢よ」と言うと、私は夢の中から現実世界に帰って来れる、そう感じていた。祖母はいつも私のシェルターで、呪いを解いてくれる魔法使いのような存在だった。

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