第106話
「澄ちゃんはね。それから頑張ったんだよ。もっと強くなろう、変わろうって思ったみたいだよ。帰ってから旦那さんに、あなたが誰と一緒になろうとかまわない。どこへでも好きなとこに行けばいい! だけど私と結婚した責任はちゃんと果たしてもらう。私と誠一が住むところと誠一が大学卒業するまでの生活費は出してもらうって、言ったんだって。男ってのは勝手なもんでね、大人しかった澄ちゃんには見下して見向きもしなかったくせに、いざ自分の手の内から離れていくようになると急に独占欲が沸くみたいで、やり直したいだのほざいてきたんだって。もちろんそんな男、二度と信用するはずないけどね。結局家には澄ちゃんと息子さんだけが残って、旦那さんは愛人のとこにいったらしいよ。でもね、これは澄ちゃんの意地というか仕返しというか、結局籍は抜いてあげなかったんだって。旦那さんの方もその後愛人に別の男が出来て捨てられたらしいよ。それからのこのこ家に帰ってきたと思ったら、病気で倒れて亡くなったらしいけど。でも息子さんも立派に育って、建築士の資格を取って、工務店を開いたとか言ってたかしら。なかなかやり手な息子さんで、不動産部門も作って、大きな会社にしたらしいよ。澄ちゃんは別居してすぐ、旦那からの生活費がいつ途切れるかもしれないからって、家でお花やお茶や日本舞踊のお教室をやっていたの。澄ちゃん真面目だったから、幼い頃から習い事をずっと熱心にやってて、お免状持っていたからね。そんなこんなで忙しくしていたみたいで、私の方も子育てやお店のことでせわしなくしてて、もうしばらく会ってないわ。最後に会ったのは、いつだったかねぇ…。」
おばあちゃんは懐かしそうに思いを馳せていた。
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