第30話


 自転車を走らせると少し冷たい秋風が顔にあたって気持ちよかった。


あらかじめ宝探しのアプリで調べておいた座標に向かった。


俺は港の方に狙いを定めた。


この街のベイエリアは、昔外国との取引が多かったせいか、その当時に建てられた洋館がたくさん残っている。


市はその街並みを生かして観光地にする計画を立て、洋館を当時の姿に戻す工事を行った。


道路は街路樹を植え、新しく建つ建物も街並みに合うように建築基準を設けたおかげで、その一帯はまるで外国の街並みのようになった。


土産屋やカフェやレストランもたくさんあり、週末は観光客で賑わっている。


海沿いのオープンカフェを見ると、俺と同世代くらいの高校生らしきカップルがいて楽しそうに会話をしていた。ふと、旭も自我崩壊的秀才男とこんなところでデートでもしたいのかな?


なんて想像すると、思わず笑いがこみ上げてきてしまった。


いかん、いかん、一人で笑いながら自転車を漕ぐなんて変態の極みだ。


顔を真顔に戻してもう一度座標を確認した。


座標はどうも図書館のあたりを指している。


この図書館は外国の古い図書館をそのまま移築してあって、中に入ると漆黒に輝く柱や床板が古き良き日の異国の空気を感じさせて、まるでタイムスリップしたような気持ちになる。


宝は図書館の入り口の看板が立ってある植え込みのところに隠されてあった。


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