甘鯛
ロナルディとリスティールさんが島に住み始めて2週間くらい。
ぼちぼちだけど、5人での島生活にも少し慣れてきた。
ロナルディとリスティールさんは、ポムの猫草花壇を拡張しつつ、釣りして売った金額で花壇の地面を広げたり、色々な野菜の種を購入したりしてる。
そんな中でビックリした事が1つ。
「レタス植えんのか。焼肉する時に肉巻いて食うのにちょうど良いな」
「何言ってんですか! 世界樹ですよ世界樹。肉を巻いて食うなんてしませんよ」
どう見てもレタスなんだよ。
ポムが言ってた薬替わりの葉っぱはレタス。その内こっそり1枚ちぎって食べてみよ。
とまぁそれくらいかな。
「船のエンジンは明後日に出来上がるって言ってたし、ペラもレーザー計測器が無いから回してみないと歪みも分かんないし、今日の修理は切り上げて釣りでもするか?」
「ホント見違えたね、綺麗になるもんだ」
ポムとリスティールさんはブリッジの掃除をしててくれてた。俺はヒビの入ってるFRPの補修と色塗りな。
「エンジン付けて、海に浮かべる直前に船の名前を書いたら完成だし、とりあえず船釣りしたいよな」
「船酔いしませんかね?」
ロナルディとリスティールさんには……
「船酔いしそうなら世界樹を何枚か持ってけば? 世界樹の種なら10粒5千ポイントで買えるんだしさ」
どれくらいの効果があるのか俺が知りたいからさ。
「そんなことで世界樹の葉を」とか言ってやんの。
「貴重な物で種も手に入らないって訳じゃ無いんだからさ、薬だろ? それに増えたら焼肉の時とかサラダに入れたりとかしたいし」
「爆釣と一緒に居ると、ホント価値観が……」
「ポムちゃん、そこは生まれ育った場所と常識の違いだ。価値観と言う物は少しずつ全員で作り出して行けば良い」
おっ、やっと来たな、待ってたぜ。
「ポセイどん、どうだった? 良い感じになってた?」
ポセイドンにちょっと頼み事をしてたんだ。
「悪く無いな。どうやら正解だったようだ」
海のエキスパートのポセイドンが悪く無いって言うなら……
「んじゃ行くか」「うん、私凄い楽しみ」
ここ最近、釣りと船の修理と並行してやってたのが、やっと今朝完成したんだ。
「小政島の外側にはかなり冷たい寒流が流れているが、政島との間に作った湾は良い感じの海水温だぞ」
「ホントにポセイどんってすげえな。海流とか好きに動かせるとか漁業関係者だったら、喉から手が出る程に欲しそうじゃん」
島の名前を付けて、島の西側にもう1つ島を作った。
元々住んでた島は
「有明海を参考に作ってみたけど、政島から流れ込む川とかも必要だよな?」
「その辺はボチボチやって行けば良いさ、海中の栄養素は俺がある程度どうにかするから」
本気で助かる。島に住む俺達も、海の中の生き物にも、どちらも住みやすい様にって配慮してくれんのな。
「今日はどんな魚を狙うのでしょうか?」
「出来れば白身の魚が良いです」
リスティールさんは釣りの仕掛けを作るのが楽しいらしく、どんな仕掛けでどんな魚が釣れるのかに興味津々。
ロナルディは赤身の魚は少し苦手っぽいけど、白身の魚はそれ程嫌じゃ無いらしい。
「爆釣。海中の環境は、お前の依頼通りに整えておいた。赤アマがそれなりの数居着いてるぞ」
「甘鯛! ホント? ホントに?」
赤アマって聞いてポムの尻尾が天を突いた……甘鯛が1番好きって言ってたし当然か。
「型はどんくらいのが多かった?」
「0.8kg〜2kgくらいが殆どで、中には3kg超えもチラホラ居たぞ」
素晴らしいじゃないか。
仕掛けは片天秤で針は3本。それぞれにエビを付けてて釣り開始。
「政島と小政島に橋を掛けて、橋の上から釣りをする為に穏やかな湾を作ったのは正解だな。貝類や海苔の養殖も出来るぞ」
「海苔も作りてえな。婆ちゃんが作った海苔めちゃくちゃ美味かったんだよな。焼いても良いし、おにぎりに巻いても美味いし」
毎年恒例だったんだ。俺は小学生の頃から手伝いしてた、だってバイト代くれるし。
「玉子焼きに入れるとめちゃくちゃ美味いし、俺も作り方は知ってるから、作れるようにしたいな」
日曜の朝から釣りする時は、何時も握り飯に巻いてた。具がしょぼくても美味いんだよ。
「おお。爆釣が美味しいって言うなら、美味しい物だ。私も食べてみたいかも」
「ロナルディも食えると思うぞ、だって海藻だからさ」
「海藻は大好きです。何時もお取り寄せして貰って食べてました」
普段からイケメンなのに笑顔だとイケメン度が増すな……
橋の真ん中に大き目のレジャーシートを敷いて、レジャーシートを拠点に甘鯛釣り。竿を上下にしゃくって甘鯛をおびき寄せるのが難しい。
「ん? んんん……ん! ごっはっーーーん! キタキタキタキタ!」
食欲全開で真剣だったポムが最初のヒット。
「そんなに重くないけど来てる!」
リールを巻くスピードが軽快だな。
徐々に近付いて来る魚影は間違い無く甘鯛。
1kg無いくらいだけど……良いなあ……凄い楽しそう。
「タモ使う? 1匹目だし使っとくか。バラすの勿体無いからさ」「うん。お願いする」
そんなに大きく無いタモで、すくい上げた甘鯛。
赤アマって呼ばれる赤い甘鯛な。
「フィーーーシュ! こいつはデカいぞ、爆釣タモを構えといてくれ」
「来ましたっ! そんなに重くないですけど……凄い! 動き回る!」
「こっちも来てます。どうすればいいですか?」
続々と4人が釣り始めた…………俺の竿は………
動かして無いから掛からんよな……Orz
そろそろ引き上げようかって言い始めた午後4時過ぎ、4人が釣り上げる甘鯛をタモで捕獲してた俺には1匹も釣れなくて、4人が釣る赤アマを指を咥えて眺めてるだけだったのが少し悔しい。
「爆釣、夜のオカズにするのは俺のから1匹使おうじゃないか」
ポセイドンが3kgくらいのデカい甘鯛を飯のオカズにしようって言ってくれる。
「とりあえず片してからな。クーラーボックス車に運んどいてくれよ」
今日の釣果は……デカいクーラーボックス3個パンパン……俺はボウズだけどな……
「爆釣。釣れなくても仕方ないよ、私の何匹かあげるからやる気出しなよ……」
「そりゃしゃーないし。気にしてないからポムも気にすん。なっ! なんだこりゃ! 来てるよ! 来てるよ!? フィーーーシュッ! デケえ! こりゃデケぞ!」
海の中にぶち込みっ放しだった俺の仕掛けに……
「なんだこりゃ!? やばいリールが耐えられ無さそうじゃん! 糸出て行きまくる!」
「爆釣、魚の動きに逆らうな。ロナルディ、タモの準備」
「おう! わーってら! バラしてたまるか……」
めちゃくちゃ暴れる……そして重い。
「ある程度まで引き寄せたら俺が海に入る。こりゃデカいぞ」「頼むポセイどん」「頑張れ爆釣」
………………………………
格闘する事30分以上。腕がパンパン。
「白アマ……だな……」「…………」
釣れたのは5kgくらいある白アマ…………
ポセイドンは信じられない物を見てる目付きだし、ポムは絶句して、ロナルディもリスティールさんもデカさにビビってる……
「食うぞ! 白アマ食うぞ!」「ホントに食べるの?」「爆釣、このサイズなら浜値でも余裕で万超えるぞ」「また魚……」「ロナ……」
最後の最後でめっちゃ楽しかった。
今日の売り上げは0ポイントだけど、食うべきだろデカい甘鯛、だって白アマだよ!
「中学生の頃に1回だけ食ったことがあんだよ。めちゃくちゃ美味いし覚悟しとけよエルフ」
ロナルディが
その時はそんな事考えてた。
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