釣り生活【釣って食料 売って開拓 爆釣さんの異世界開発】
サン助 ハコスキー
カサゴ
俺の働く造船所の近く、自宅の玄関を出て30歩の所にある堤防。今日も仕事終わって5時過ぎくらいから、何をしてるかって言われたら釣り。
「我が家の晩餐を彩れ、カモーンヌお魚さん!」
狙いはカサゴ、味噌汁に入れると美味いんだ。
仕掛けなんかは簡単なもんさ。5mの安物の竿にプラスチックの安物のリール、ラインなんかは最初から付いてたヤツ、ちょっと大き目のオモリを付けて針はチヌ針、餌は人工イソメ。
「フィーーーシュッ!キタキタキタキタ!」
いい感じの手応え、なかなかの大物かも……刺身でいけるか? そんな感じの手応えが竿に伝わって来る。
安物の釣りセットで格闘する事約5分、このまま釣り上げたら、今日もビールを美味く飲める事間違い無し。
テトラポットの端っこから覗き込んで、近付いて来る魚影を見たらデカいカサゴで、ウヒョーって思ったら、ザッパーンって大きな音がして、ブクブクっでムガホガであっぷあっぷって感じで高波に攫われた。
そう、高波に攫われたはずなんだ。
「何処だよここは? なんで磯に居るんだよ。」
濡れてもいなきゃ、海中でも無くて、テトラポットの上でもない。
岩がゴツゴツした磯で、岩の上に立ってる俺。何コレ?
「すっげー、めちゃくちゃ綺麗な海じゃん何コレ?」
目の前はもちろん海、真っ青な海。
俺ん家の目の前の海は緑、汚ったない深緑。だからマジ知らん場所なんだけど……
「ははーん、夢だなこりゃ。夢見てんだな。」
とりあえず釣るか。そう思って釣り竿を探すけど何処にも無くて。
「夢なら出て来い、俺の釣り竿召喚!」
まあ、シーーーンだよな。俺の声と波の音と風の音しかしねえでやんの。
「えーと……ここは何処? ワタシは……俺は俺だよな。」
魚釣造船所の
「あっ!スマホスマホ。現在地を確認すりゃ良いのか。」
MAPで調べてみたぜ、ちゃんと電波もWiFiが来てるし。
「ぬあ? 陸地がここしか無い、何コレ?」
目を疑ったね。だってスワイプして遠くに移動しても拡大しても、今居る場所しか陸地が無いんだ。周りは全部海。
「世界地図は……なんだコレ? 画像は出てくるけど……」
真四角の画像の殆どが水色で、真ん中にポツンと小さな黒い点があるだけ。拡大したら、さっきMAPで見た今居る場所だった。
「夢なら早く覚めてくれ。目の前に広がるいい感じの磯と、ポケットに入ってる人工イソメしかないって、釣り好きには生殺しじゃねえか!」
そんな事を叫んでも、なかなか夢から覚めてくれなかった。
自分が何をしてるのか分からないけど、とりあえず岩から下りてみる。さっき見たMAPだと島みたいだし。
「ちっちぇっ何コレ? 島ちっちゃ。」
反対側の端が見える。たぶん300mくらいかな。
「んで、なんで俺の車があんの? 道路も無いのに。」
真ん中にポツンと俺の車が停まってる。
古いスバルの軽バン、白いヤツで貨物な。とりあえず近付いてみた。
「おっ、タックル(釣り道具)入ってんじゃん。もしかしてさっきの召喚で呼び寄せたか?」
やっぱり夢か、良いさ良いさ。釣りすんぞ。
「ん〜なんでか知らんが調味料とカセットコンロと鍋?」
後部座席が無くて、後ろの広々としたスペースには釣り道具と、多少の工具が置いてあって、助手席には各種調味料と鍋やヤカンやフライパンとカセットコンロとガスボンベ3本セットの奴が5個。後部座席には何着かの服とお風呂セット? なんだこりゃ?
「おっ、そこそこ良い包丁もあんじゃん。釣って刺し身にしてやる。」
小出刃包丁と三徳包丁だけじゃ無くて、両刃の出刃とか刺身包丁まである。クーラーボックスもあるし、人工イソメはポケットに入ってるし、釣って〆て刺身にして美味しく食べろって事だな。
「ぬお! さっきのカサゴ。マジ? 釣れてたんじゃん。さすが夢。」
クーラーにカサゴが入ってんの。無性に食いたくなった。
「こんだけデカければ刺身もだけど、お吸い物とか汁物が欲しくなるな……ってカセットコンロあんじゃん。ナイス夢!」
まな板もあるし……すげえな夢。
「それではコチラを、捌いてゆくぅ!」
人気のお魚料理系ユーチューバーの真似してみた。ぜんぜん似てない。
「さて今日の食材はコチラ。カサゴ……」
似てなさすぎて笑える。
「いっつも動画とか見てて思うけど貧弱なハサミ使ってんよな……漁師さんなら
ヒレの話ね。硬いヒレでも、庭木の剪定用のステンレス鋏を使えばバチバチ切れてくよ。魚を捌くのに飽きた年配の漁師さんなら、高確率で使ってるぜ。
「何を食ってるかな……って何も入ってないのな。」
動画だと中身の匂いが臭せっとか言うんだけど、そんな事も無い、だって夢だから。と思ったけど、新鮮だからだよ。
「鍋に水を……水が無いのな。そこは不親切っ!」
さっきからなんで独り言を言ってるかだって?
「そんなのモチのロンで寂しいからだよ。夢だけどさ、夢ならAV女優とか出て来りゃ良いのに。」
おっと、心の声と独り言が反対だ、ヤバいヤバい。
「皿も無えのな。まっいっか、海水汲んでこよ。」
すっげー綺麗だったもんな海、海水で洗えば良いだろ。
「内蔵やヒレはリリース。自然にお帰り。」
カニとかの餌になるだろ。
「全部刺身……焼いてもいけるか? やった事無いけど。もうちょい小さけりゃ丸ごと素揚げでも美味そうだけどな。」
たたたたたたったたたたらった〜たたたたたたたたったたらった〜♪テンテケテケテケトテンテンテンテケテケテケトテンテンタ〜ラ〜ラ〜♪
「本日のお料理はカサゴの刺身と半身を塩胡椒で焼いたヤツと来れば……ダンっ銀色のヤツ飲みてえなあ……ビール飲みてえなあ。」
フライパンで焼いたヤツも美味いよ。熟成させて旨みをとか言うけど、九州は魚は釣ったらすぐ食うが基本な。俺は新鮮なのが好き。
「刺身めっちゃコリコリしてんな。うまっ。」
ワサビも欲しい……なんでか知らないけどカラシとニンニクはあるのにワサビが無いんだ。
「醤油があって、刺身があるのにワサビが無いのは不親切な夢だな……ワサビ召喚!」
出来るわけ無いか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます