第三七六食 恋人たちと最後の戦い⑤
結局その後、夕食そのものはわずか二〇分ほどであっさりと終わりを迎えた。なんだか拍子抜けしてしまったが流石は
「どうだった、お父さん? 私たちのお料理!」
「ああ、とても
「でしょでしょ!? それでどう? お兄さんがどんな人なのか、ちょっとは分かってもらえた!?」
「ふむ……」
机から身を乗り出して問いただす
「正直……振る舞われた手料理を食っただけで人柄まで見抜けと言われても難しいな。グルメ漫画じゃあるまいし」
「な、なんか急に正論が飛んできた!?」
愛情を込めて作ったハンバーグの味がイマイチ父親に響かなかったことにショックを受けて上体を
「いや、言いたいことは分かるんだぞ? あんなに不器用で、一年前まで包丁なんか危なっかしくて持たせられなかった真昼がこんなに上手な料理を作れるようになってるんだからな。半年前と比べてもずっと上達しているようだし……
最後の
「だがやっぱりこれだけで彼のすべて見極めるというわけにはいかないな。まあ、その話は後にしようか。真昼、家森君に関することなら、まず最初に片付けておくべき話があるだろう?」
「先に? ……あっ!」
言われてハッとしたように身を跳ねさせ、真昼はリビングの隅っこに置いてあった自分の
「こ、ここに全部入ってるよ……今回の試験の解答用紙」
そう、昨日まで
「(来る途中で真昼に聞いた時は『大丈夫です』って言ってたけど……)」
しかし彼女のその言葉を疑うつもりは
「えーっとどれどれ……『現代文:一〇〇点 古文:一〇〇点 数学Ⅰ:一〇〇点 数学A:一〇〇点 英語Ⅰ:一〇〇点』……ってなんじゃこりゃあっ!?」
初めて真昼の通知表を見た時の自分を想起させるリアクションとともに、今度は真昼父が上半身を
「ま、まさか全教科一〇〇点……!?」
「あ、あはは、流石にそれは無理ですよう。国語と数学と英語は特に勉強を頑張ったからたまたま取れただけで……」
「いやいやいや、一〇〇点って〝
彼女がこの数週間、勉強に全神経を
「あらあら、平均点も今までで一番高いんじゃないかしら? 真昼ったら、よっぽど
「か、からかわないでよ、お母さん。好きな人に会えないんだからイヤに決まってるじゃん」
俺と冬夜氏が硬直する横で
「真昼は、
「え?」
不意にそう
「……家森君。君、酒は飲めるのか?」
「えっ? え、ええ、まあ人並みには……」
その唐突な話題転換に戸惑いながらも頷いて返す俺。
「なら少し二人で話そう。……真昼が約束を守ったからには、俺もいつまでも目を
そう言った親父さんの表情は、なんだかとても優しげに映った。
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