第三七〇食 旭日明と娘カップル③
「どど、どういうことなのお母さん!? お父さんが私たちのお付き合いに反対してないって!?」
「いえ、そのままの意味だけれど……え? 二人ともなにをそんなに驚いているのよ? まさか反対してほしかったの?」
「そ、そういうわけじゃないんですけど……でも俺もてっきり、真昼のお父さんは俺たちの交際には否定的なんだとばかり思ってました。真昼のこと、すごく可愛がってるって聞いてたので」
「あら? その理屈で言うなら、まるで
「失礼しちゃうわ」と
「子どものことが可愛くない親なんていないわ。私は真昼が大切だからこそ、それがこの子の幸せに繋がるならどんなことだって応援してあげたいし……それはお父さんだって同じなのよ」
「で、でも前はお父さん、私に『もうその男の部屋には行くな!』って大反対してたよね?」
「それはあなたが不用意に見ず知らずの男の部屋に上がりこんだりしていたからでしょ。私はあの時、あなたの人を見る眼を信じたけれど、親の反応としてはお父さんの
「うっ……」
「それに関しては俺も親父さんが正しいと思う……」
これまで無防備な少女に散々苦労させられてきたからか、明の言葉に賛同するように数度頷く青年。実際、真昼が夏に
「たしかにあの人は真昼が夕くんと付き合い始めたって知った時、ものすごく嫌そうな……というか悲しそうな顔をしていたけれどね。『俺の可愛い真昼が他の男にとられた!』とか『もし真昼が家に連れ帰ってきたらその男、難癖つけて逮捕してやる!』とか、一人で大騒ぎしてたわ」
「やっぱり大反対されてるんじゃないですかそれ!? というか今日これから会う予定なのに大丈夫なんですか俺!?」
「ふふ、理屈と感情は別物だからね。だけどあの人だって、今の真昼が誰の隣に居るのが一番幸せかくらいちゃんと分かってくれているわよ。……たぶん」
「最後の一言で不安が増したんだけど!? ほ、本当に大丈夫なの!?」
「大丈夫だってば。それに今回の試験のことだって、あの人なりに思うところがあったからあんなことを言い出したんだろうし……ね」
「……?」
少しトーンを変えて口にしたその言葉の真意を
「まあどちらにせよ、夕くんと直接話せばあの人だって二人の交際を応援してくれると思うわ。だからそんなに深く考えず、ありのままのあなたたちの話を聞かせてあげて
「ありのままの私たちの話……って?」
「なんだっていいのよ。二人が出会った時のこととか、普段はどんな会話をしているのかとか、共通の趣味やお友だちの話でもいい。変に
「わ、わかった! それじゃあお兄さん、さっそくお父さんにどんな話をするか打ち合わせをしましょう! お兄さんが
「話聞いてた? 変に気取ろうとしちゃ駄目なのよ」
思い出のエピソードを指折り数え始める娘に母がため息を
「……俺たち二人の関係を理解してもらうなら」
そんな中、夕が静かに言った。
「言葉なんかより、もっと分かりやすいものがあると思います」
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