第三〇四食 家森夕と湯たんぽ少女②
★
「よーし、
「はい? なんですか、お兄さん?」
ほぼ押し切られる形で真昼との
「この
「こんなの置いたままじゃ寝づらくなっちゃうので
「俺の話聞いてる!?」
少女の手でぽーいっ、とあっさり
「えへへー、でもまさかこんなに早くお兄さんと一緒にお泊まり出来る日が来るとは思いませんでしたっ! 今夜は語り明かしましょうね、お兄さんっ!」
「いや語り明かすな、明日から学校だから早く寝ろって言ってるだろ! というか秒で国境侵犯するんじゃないよ!?」
夕としては万が一にも間違いが起こらないように、そして何よりも真昼が
「(大体母さんも母さんだろ、普通こんな状況に我が子を
そもそも今回のことは母の
「(でも母さんにはいきなり帰ってきて飯まで作ってもらったのにそこまで要求するのは流石になあ……父さんだって残業して帰ってくるから疲れてるだろうし、せめて寝る時くらいはゆっくり休んでほしいし……)」
なんだかんだ一日自分たちの面倒を見てくれた母と、下宿代や学費の大半を負担してくれている父。彼らの顔を思い浮かべると、夕にはどうしてもそんなワガママを言うことが出来なかった。それに「両親が使っている布団を一枚
「(ええいっ、やめだやめだ、考えてても仕方ない! 母さんも言ってたけど、要は俺が変なことしなけりゃそれで済む話だしな、うん!)」
自らにそう言い聞かせ、青年は両の頬をパチパチと二度叩いて
「さあ、もうさっさと寝るぞ。何回も言うけど明日は朝早いんだからな」
「えー、なんかもったいないような……」
「よい子はもう寝る時間なんだよ。ほら、電気消すぞ」
「ぶー……あれ? 豆電球はつけたまま寝るんですか? お兄さん、いつもは真っ暗にして寝てますよね?」
「なんでそんなこと知ってんだよ……そうだけど、今日はこれでいい。完全に真っ暗にしたら真昼が怖いだろ?」
「へ? 私、雷は怖いですけど別に暗いところとかは平気ですよ?」
「そういう意味じゃなくて……まあいいや。今日は俺がそういう気分だから、これで我慢してくれ」
「???」
こちらの気遣いをまったく理解出来ていない恋人に、夕は力なくため息を吐き出す。
睡眠は生物にとって一番の休息のはずなのに、今日に限ってはとてつもなく疲れる夜になりそうだった。
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