第三〇〇食 湯上がり少女とドライヤー①
風呂から上がった俺は着てきた服ではなく、自分の部屋のタンスから引っ張り出した
そして俺がパジャマ目掛けて衣料用芳香剤を連射していると、下の階からトントンと階段を
自室で髪を乾かし、
「あら、真昼ちゃんならお風呂行ってるわよ」
「知ってる。……バスタオルと服は?」
「タオルは新品、服は悪いけど私のお下がりを貸したわ。……言っておくけど、
「だ、誰がそんな恥知らずな真似するか! というかそれを言うなら俺が風呂入ってる時に真昼にタオルなんか持って
「いいじゃない、あんたの
そう思うならもっと気を遣ってやってくれと思うが、既に後の祭りだった。それにしても
「晩飯の用意は? まだ済んでないなら俺も手伝うけど」
「
「大きなお世話にも程がある」
軽く返しつつ、俺は三階の自室へUターン。そして別に
一〇分少々自分の部屋を
「お兄さん、入っても大丈夫ですか?」
「真昼か。どうぞ」
本を脇へ置いて顔を上げると、開かれた扉の
「すみません、お兄さん。お母様に聞いたら、お兄さんの部屋にドライヤーがあるって言われたんですが……」
「ああうん、あるよ。こっちおいで」
「は、はいっ」
俺が手招きすると、真昼はキョロキョロと周囲を窺いながら
「(そういや、初めて会った時もこんな感じだったっけ……懐かしいな)」
まだ互いの名前すら知らなかったあの日のことを思い出していると、少女はきょとんと首を二〇度左へ傾けた。「ごめん、なんでもないよ」と先んじて答え、机の上に出しっぱなしだったドライヤーのプラグをコンセントへ差し込む。
「じゃあこれ、使ってくれていいから」
「はい。……あ、あの、お兄さん?」
「ん?」
「そ、その……私の髪、乾かしてもらえませんか?」
「……え?」
唐突なそのお願いに、今度は俺がフリーズする番だった。
当たり前だが、真昼は腕や手を
「い、いいけど、そんなに上手くやれる自信ないぞ? 人の髪なんか乾かしたことないし」
「は、はい、大丈夫です」
「まあ君がそれでいいなら……じゃあこの辺、座ってくれるか?」
ぽんぽんと座っていたカーペットの上を叩いてやると、真昼はこくんとひとつ頷いて俺の前に腰を下ろした。ふわりとシャンプーのいい匂いが
ややサイズが大きい寝間着の合わせ目や、濡れ髪からちらりと覗くうなじも妙にセクシーで――とそこまで考えかけたところでぶんぶんと頭を振り回し、余計な
「(この子は
おそらく本人に言ったら怒られるであろう呪文を
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