第二九七食 彼の実家と女子高生
★
「はいどうぞ、
「あ、ありがとうございます。いただきます」
流れで
本当は真昼も先日、
もちろん、単純に〝彼氏の親〟に会うのが怖かったという思いもあった。思考回路の単純さゆえにドラマや小説の影響をモロに受けるこの少女は、「お前のような小娘にうちの息子はやれん!」と交際に大反対されることを
「いやー、久々に帰って来たけどやっぱ落ち着くなあ、実家って」
「そう言うわりにはあんた全然帰ってこないじゃないの。こないだだってバイク取りに来たかと思ったらすぐ帰るし。でもこんな可愛い彼女さんがいたんじゃ無理もないけど……このスケベ」
「誰がスケベだ。大体その頃はまだ付き合ったりしてないっつの」
「まだ一週間ちょっとなんだっけ?
「やめてくれ、親の
「あんたぶっ飛ばすわよ。どう思う真昼ちゃん、このデリカシーのなさ? 今からでも遅くないわ、他にもっと格好いい男の子を見つけたらどう? おばさん、その方が絶対真昼ちゃんのためになると思うんだけど」
「あ、あはは……」
別の切り口から交際を反対され、真昼は
「……だけど本当にびっくりよ。夕ったら中学も高校も、彼女どころか女友だちの一人も連れてこなかったんだから。たまに遊びに来るのもいつも同じ男友だちばっかりだし、てっきりそっちの道に進むのかと思ったわよ」
「待って、俺
「それが大学でこぉーんなに可愛い彼女さんが出来るなんてねえ。真昼ちゃんなら引く手あまたでしょうに、よっぽど上手くやったのね、夕?」
「『上手くやった』とか言うな。人聞き悪すぎるだろ」
「そ、そんなことないですよ。お兄さんは優しいし格好いいし、最初に好きになったのだって私の方ですから」
「……もしかして真昼ちゃん、よく人から『変わってるね』とか『趣味が特殊だね』とか言われる?」
「失礼だな、おい。
「えっと……はい、わりとよく」
「そうだね、あの〝
夕が半眼でツッコミを
「そういえばさっきから夕のことを『お兄さん』って呼んでいるけれど、真昼ちゃんはこの子の大学の後輩、ということなのかしら?」
「あ、いえ。私、まだ高校生なので……」
「高校生!? えっ、が、学年は?
「い、一年生です。
「ゆ、夕、あんた……」
「やめろ、実の息子を性犯罪者を見るような目で見るな!?」
我が子から身を引く母と叫ぶ息子。真昼の母親は年齢差交際について一切問題ナシと主張していたが、日菜子は少し違うらしい。というより、成人している子どもが未成年の恋人を連れ帰れば大抵の親は同様の反応を示すだろう。その交際相手のことを
しかし日菜子は頭を左右に振ると、「まあいいわ」と続ける。
「真昼ちゃんさえそれでいいなら、後は二人の問題だものね。私が横から口を出すべきじゃないでしょうし……まさかとは思うけど、うちの子に手を出されたから仕方なく付き合った、とかではないのよね?」
「するかぁッ!? あんた自分の息子のことなんにも信用してねえな!?」
「それは大丈夫です。どちらかと言えばなにもなさすぎたくらいなので……」
「いや真昼もなんでちょっと不満そうに言うんだよ!? なにもなくて当然だろ!」
「ごめんね、この子ったら本当にヘタレで……情けないお願いだけれど、いろいろリードしてあげてくれるかしら?」
「高校一年生にどんなお願いしてんだ! というかさっきと今で真逆のこと言うのやめろよ!」
「はいっ、任せてくださいっ!」
「今日一番のイイ笑顔で答えるな、胸を叩くな!?」
深々と頭を下げる母親と、自信満々に頷く年下の彼女。
そんな二人の間で、青年はなんだかもう泣きたいような気持ちに駆られてしまうのであった。
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