第二七七食 彼女の部屋とご招待①
★
正月
「つってもレジのバイトくん、目の奥が死んでたけどな……うちのバイト先は年始休だけでもあって良かった」
「お兄さんもスーパーアルバイトですもんね。あはは、なんか〝スーパーアルバイト〟って言うと、他の人よりすっごく仕事が出来る人みたいで格好良いですねー」
「バイトリーダーかよ」
くだらない話をしながら、俺と
「というか、どうせ大荷物になるの分かってたんだからバイクで行けば良かったなあ。お、重い……」
「もう、お兄さんったら。歩いて行けるくらいの距離なら歩いた方がいいんですよ、健康的にも環境的にも。ただでさえお兄さんは運動不足ぎみなんですから」
「うっ……なんか真昼、お母さんみたいなこと言ってんな」
「そうですか? 『こら
「(可愛い)」
両拳を振り上げながら言ってくるお母さん真昼を恐れるどころか、むしろ
「――それに」
「ん?」
半歩隣を歩いていた真昼が、不意に距離を詰めながらこちらを見上げる。
「バイクに乗っちゃったら、こんなことは出来ませんよ?」
「!」
言いながら俺の左腕に自分の右腕を絡めてくる我が恋人に、俺はドキッと心臓を跳ねさせた。照れか寒さかで頬を桃色に染めた彼女は、それでも「にひひ」と
緊張も相まって訳の分からないことをぐるぐる考える俺に、真昼は容赦なくぴったりと密着してくる。なぜか「ふふーん」と勝ち誇るような笑みを浮かべているのは、俺が今とても恥ずかしいことを
結局、それからうたたねハイツに
「そ、それで真昼サンや。これからどうすればよろしいので?」
二〇五号室――すなわち真昼の部屋の前までやって来たところで俺がぎこちなく問うと、少女は組んでいた腕をするりと
「さっきも言った通り、今日はお兄さんを私の部屋にご招待します!」
「いや、ご招待って言われても……もう何回か入ったことあるだろ」
ようやく冷静さを取り戻した俺がそう言うものの、真昼は「ちっちっち!」と指を三回左右に振ってみせる。
「今まではお掃除とか風邪のお
「は、はあ……つまり、真昼の部屋で
「はい、そうです! あ、といっても私が
そう言ってにっこりと笑ってみせた恋人がいったいなにを
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