第二五四食 うたたねハイツと忘年会⑤
「いっやあ、よく食べてよく飲んだあ……これでもう私、今年に未練なんてないなあ」
「あははー、
「そもそもあと三時間ちょっとで今年も終わりですけどね」
アルコールに赤く染まった顔でだらしなく倒れ込んだイケメン女子大生を見て、
「あの……
「礼なんか
「え」
「ど、どういう意味ですか千鶴さん!? それじゃあまるで、私のお友だちはまともじゃない人ばっかりみたいじゃないですか!?」
「一〇〇パーセント変人しか居なかったから言ってンだよ」
双方真面目な性格ゆえか意外と波長が合ったらしい金髪女子大生と武闘派少女が言葉を
「あれ、夕ってばもう後片づけしてんの? じゃあ私も手伝うよ」
「ああいや、違う違う。今からコレ使おうと思ってさ」
「使う……? ……ハッ!? ま、まさか夕、うら若い女子高生たちが
「どういう想像力してんだよ……そんなしょうもないこと
はわわと口元に手を当てる蒼生を雑にあしらって立ち上がった青年は、出汁を移した鍋をカセットコンロに設置して再度火にかけていく。具材の消えた鍋つゆを
「あ……もしかして、お
「おう。やっぱり
答えながらなめことオクラを出汁に加え、ある程度火が通ったところで
「シメの蕎麦、食う人ー?」
全員が即座に――唯一、千鶴だけは少しだけ
「んうぅ~っ! このお蕎麦めちゃくちゃ美味しいです、お兄さんっ!」
「そうか、それはよかった。流石にカニが入るのは予想外だったけど、おかげですごい贅沢な蕎麦になったな」
「んっまっ!? ナニコレ、つるつるしてるからいくらでも食べられるんですけど!?」
「ねー。お蕎麦は太りにくいって聞くし、あんだけ食べた後でもそんな罪悪感ないしさー。ねー、ひよりーん?」
「ん……美味しいね」
夕特製のシメ蕎麦は高校生たちにもなかなか好評だったらしく、また壁際で本日八本目を飲み干した蒼生も、ピリリと
「いやあ、夕もなかなか
「イヌかテメェは。せめてもうちょっとマシなモン食いやがれ」
「う、うるせえな……別にいいだろ、アレだって
「あはは、ごめんごめん。別に文句があったわけじゃないって。ただ変わったなあって思っただけ」
そう言って柔らかく笑うと、イケメン女子大生はちらりとJK組の方を見やった。あっという間に蕎麦を食べ終えたらしい少女たちは、食後のお茶を飲みながらわいわい話し込んでいる。
「今年はあの子たちのおかげで色々あったねえ」
「……そうだな」
「……」
壁に背をつけて座る大学生組の三人は、それぞれにあの高校生たちとの思い出を振り返る。
この一年間――厳密に言えば最も付き合いが長い夕と真昼でも出会ってからまだ八ヶ月くらいだが――、本当にいろいろなことがあった。体育祭に夏の海、二つの文化祭やクリスマス、その他とるに足らないような日常の一コマ。それら全ては今年の春、夕が隣室のドアの前で
「(……あの日、あの子に声を掛けて本当によかった)」
もしも面倒ごとを嫌って無視していたら、あるいは真昼が夕の助けを受け取っていなかったら――きっと今日、この光景は生まれていなかっただろうから。我ながら柄じゃないなと苦笑しつつ、それでも夕は心の底からそう考えずにはいられない。
彼が見つめるその先で、隣人の少女もまた同種の
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