第一一八食 旭日真昼とお見舞い少女①
「暇だなあ……」
昨夜と比べれば体調も良くなったとはいえまだ完全回復したわけではない
画面に出ているのは料理のレシピが無数に投稿されているサイト。今閲覧していた肉料理のおすすめレシピのページにはハンバーグやメンチカツの作り方、それ以外にも〝タマネギを使ってステーキを柔らかくする
「お腹
ちなみに昼食も隣人の大学生・
「(お兄さん、なに作ってくれるのかな……? 朝は雑炊だったけど……)」
真昼は夕の料理が好きだ。この数ヶ月ですっかり食べ慣れてしまったし、それ以上に彼の作る料理はどこか
ゆえに申し訳ないという気持ちが勝ちつつも、真昼は夕が来てくれるのをどこか心待ちにしていた。もちろん、空腹という最高のスパイスを添えて。
「!」
ちょうどその時、真昼の部屋のインターフォンが高らかに鳴った。勢いよく顔を上げた彼女は少しだけふらつく足でぱたぱたと玄関まで走っていき、ドアの向こうに立っているであろう隣人の大学生を花のような笑顔でお出迎えしようとして――
「あっ、ひま。体調どう? お見舞いに来たよ」
――しかしそこに居た親友の姿を認めた途端に一転、しおしおと枯れたような表情に変わる。その様子は例えるなら、クリスマスに欲しかったおもちゃが貰えなかった子どものようだ。
「あっ……うん、わざわざ来てくれてありがとう……」
「言葉のわりに露骨なガッカリ顔するの、やめてくれない?」
差し入れの紙袋を片手に不満そうに言ったのは、真昼の親友・
「ご、ごめんね。本当にありがと、ひよりちゃん」
「いいよ、大した距離でもないから。あ、
「あ、あはは、そうなんだ」
友人たちの性格をよく理解しているひよりに苦笑しつつ、真昼は彼女を部屋の中へ招き入れる。八月ももうすぐ終わりとはいえ、季節はまだまだ夏。クーラーがほどよく
「でも珍しいよね、あんたが風邪引くなんてさ」
「うん、自分でもびっくりしちゃった」
一応
「それで? どうなの、体調の方は?」
「一晩寝たらかなり良くなったよ。お薬飲んだし、あとお兄さんがごはん作ってくれたから」
「ああ、
「うぐっ!? い、言わないでよ、自覚はしてるから」
「はあ……後で菓子折り持ってご挨拶に
「な、なんかひよりちゃんがお母さんみたいなこと言ってる!?」
頬に手を当てて
そんな彼女を見て「私って他の人から見てもお兄さんに迷惑かけてるんだなあ」と再認識した真昼はどこか遠い瞳をしつつ、風邪が治ったら夕になにかお返しをしようと固く心に決めるのであった。
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