第六八食 千歳千鶴と女子高生①
★
昔から、「目付きが悪い」と難癖つけられて育った。
鬱陶しいことこの上ないと思わないか?
今でこそすっかり口の悪さが板についちまったオレだが、別に子どもの頃からこんなだったわけじゃない。一人称も〝わたし〟だったし、特別暴力的に振る舞っていたわけでもない。それなのにどいつもこいつもヒトのことを
そんなこんなで〝わたし〟はオレになった。端的に言うとグレた。
親に貰った身体に
さて、自分がそういうルーツを辿ったからか、それとも生来の性格ゆえなのかは
逆に動物や子どもは今も昔も大好きだ。汚れていないというか、純真無垢な姿を見ていると
転じて可愛いウサちゃん柄のスマホカバーやら、幼い子どもに大人気のキャラクターキーホルダーやらも好きだった。どれもオレが身に付けていると「ガラじゃない」とか「意外すぎる」とか言われるが知ったことか。今さら他人の目なんか気にしちゃいない。
とまあ長くなっちまったが、これがオレという女の大まかなプロフィールだ。ああ、別に覚えてくれなくていい。そんなつもりで語ったわけでもないんだ。
「なにが『学内禁煙の規則を知らないのか?』だクソが。テメェこそハゲるまで生きてンのに棒飴も知らねェのか」
オレはブツブツ文句を垂れながら、下宿先のボロアパートまで大股で歩く。
今回のイライラの矛先は名前も知らない大学の先公だ。今日の試験が終わって疲れた脳ミソに糖分をやっていたオレに近づいてきたかと思えば、いきなり先の台詞をぶちかましてきやがったのである。どうやらお
「しかもあの野郎、結局謝りもせずにどっか行きやがって……! ジジイのクセに『ごめんなさい』も言えねェのかよ、あァイライラするぜ……!」
オレが苛立ち混じりにガリッ、と棒つきキャンディーを噛み砕くと、道端でイチャついていたカップルがこっちを見てからそそくさと逃げるように去っていった。……ンだよ、なんも言ってねェだろうが……!
「(だークソッ! ムカつく! どいつもこいつも馬鹿ばっかか! ストレスでオレまでハゲるわッ!)」
今のところ美容室でかなり
「(……近道すっか)」
大学からオレのアパートまでは途中にある公園を突っ切った方が早いのだが、普段はなるべく通らないようにしていた。なにせオレは
しかし今日はいつもよりストレス過多。さっさと帰って〝あにまるチャンネル〟のにゃんこ特集でも見て癒されたい気分だった。まだ試験期間の真っ最中であり、ただでさえ趣味に使える時間は少ないのだから。
「(……よし、子どもはいねェみたいだな)」
ちょうど昼時だからだろう、奇跡的に公園内に人影は見えない。若干不審者にも見られかねない挙動でそれを確認し、オレは公園内へと足を踏み入れる。
そして噛み砕いてしまったキャンディーの代わりにキシリトール入りのボトルガムを一粒口に放り込みながら反対側の出口へ抜けようとした――その時だった。
「にゃー、にゃー」
「(あン?
この近くでは野良猫というのはあまり見掛けないのだが、やはり公園には集まるものなのだろうか。ボロアパートはペットNGということもあって
「(あれは中学生……いや、高校生か……?)」
もうとっくに世間は夏休みシーズンなので正確な年齢は判別しづらいが、とにかくそこ居たのは中高生くらいの少女だった。少なくとも公園で遊ぶような年齢には見えない……いや、
少女は友人と
「にゃー、にゃー。あっはは、くすぐったいよっ!」
「(ッ!?)」
――それは、朝日のように無垢な表情で笑う少女。
これが、オレと
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