信じていた世界とは………

椎名由騎

第1話 生まれた時から

 生まれてから住んできた世界が私の唯一知る世界だった。不思議にも思わず、そこにあるのが絶対だと思っていた。私自身もその世界が普通だと思い過ごしてきたこの家が異常だと知ったのは数年経ってからだった。

 学校の宿題を終えてから家で出されている勉強を始める。だんだんとやることが億劫になって嫌がる顔をしながら勉強をやっていると、父親に叱られる。

「そんなにやりたくなければやるな!」

 それでもやるだけやっておかないという今考えればよくわからない使命感で泣きながらも勉強をしているとその度叱られる。子供好きだが泣く子供は嫌いだった父親にとっては苛つく対象でしかない私は、毎日3時間に渡る説教を延々と泣きながら聞いていた。当時の私はこれが普通なんだと思っていた。



 後に考えれば自分の言うことを聞かない子供という父親の中での私が出来上がり、26歳になった今も過保護に扱われている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る