08:『0.0000000001』くらい少年は前に進む

起きた俺はどう見ても寝不足だった。随分と長い時間寝れなかったのだろう。


「―おはよう。むつき」

「あぁ、おはよう。」

「昨日はありがとう。寝泊まりさせてくれて。ご飯もご馳走になっちゃったし。」

「これからどうするんだ?」


 俺は自分の迷いを悟られないように聞いた。


「うーん どうしようかな・・・ はっきり言って何も決まってないな。とりあえず頑張ってみる。時間はまだあるし、私はある程度先の未来を予測してこの世界に送られたから。しかも魔王が侵略して来ているとはいえ、私の国もそこまで脆くないもの。」


 何がとりあえず頑張るだか。昨日は不安で泣いていたのに。


「でも、もうむつきには迷惑かけないから安心して。今日まで匿うって約束だったもの。」


 その優しさがまた一つ俺を傷つける。

 だが、俺はもう決めた。


「何だ、その・・・ 俺を頼りたかったらその、頼ってくれ。」


 まあ、一度断っておきながらやっぱり俺はお前と一緒に魔王を倒すために戦うなんて言えるほど俺も自信がない。

「でも・・・ これは私の問題だし、これ以上むつきに迷惑かけるのもね。これ以上頼るとここが魔王に目をつけられるかもしれないし。いや、勿論ありがたいんだけど・・・」


 どうやら、カーベラには俺が異世界に行って魔王討伐を手伝うとかではなく、衣食住程度のサポートをすると聞こえたらしい。俺の言い方が悪かったのは認めるし、昨日断った流れから行くと当然その答えにたどり着くかもしれないが、果たしてこれ以上俺に、この自信の欠片もない俺にどう言わせろというのだ。全く。


「あぁ! もううるせー!うるせー!」


 カーベラは何が起きたのかと驚いている。

「そういう意味の頼るじゃねーよ。もう昨日の断った事は忘れろ!俺が言いたいのは俺の命をお前に預ける、一緒に魔王なんぞぶちのめしてやるって事だよ!」


 久々に俺も声を荒げた。俺もこんなに大きな声が出るとは驚きだ。

 カーベラも当然驚いている。しばし時が経ち、カーベラも俺の言葉を理解したようだ。


「ありがとうっ」

 少量の涙を見せながら、今までで一番かわいい笑顔を作り俺をみて彼女はそう答えた。


ーここが、ここからが俺の脱『普通』生活の始まりだ・・・

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