英雄になりたくて

@masirona

第1話 悪魔が参りました

『太陽エネルギー10%、化学物質エネルギー10%、フルチャージ』


女性の電子音が船内に聞こえる。


「地上へウィルス検査を」


黒髪の美少年は命ずる。


『確認中・・・10%、40%、70%、100%、確認完了。調査結果、西の座標に魔物の群れを発見。』


男の前に画面が浮かぶ。


人ざる物が町を破壊し、人を殺している。


『個体数42体。敵知能、低レベル。勝率99.7%。敵殲滅までの予想時間、5分32秒』


「出撃準備を」


『了解』


船団の中から一つの飛行船が出て地上に向かう。


「きゃあああああああ!逃げろ!!!」


「助けて!!!くはっ」


「うええええ!!!おかああさん!!!」


魔物たちは数百の歯を見せ、人々を食べつくしていく。


「ひいいいい!!!」


『くはあああああああ!!!』


魔物が少女を食べようとした瞬間、真っ二つになり死んだ。


「大丈夫です。助けに来ました」


「あ、ありがとうございます!」


そこに現れたのは光の剣を持った女の子だった。


少女は魔物を次々と倒していく。


少女の金髪が黄色いシルクのように輝く見える。


剣は錆びることもなく、切れ味を保ったまま輝いている。


「これで終わり―だ!!!」


一瞬で魔物たちを全部倒した女は剣を天に上げ、宣言した。


「魔物はすべて殲滅した!私達の勝利だ!!!」


「ああ―ああああ!!!勇者様だ!」


「勇者様が私達を救ってくれた!」


「ありがとうございます!勇者様―!」


「勇者様―!」


村人は少女を仰ぐ。


その後、二人の勇者の仲間が走ってくる。


「先に行っちゃうなんてありえないでしょう!もう、全部片付けたし、ひどいよ―セリア!」


「へへ、ごめんごめん【ウェンディ】」


ダガーを手に持った彼女は呆れたように吐息する。


「全く、勇者様はせっかちな人だ」


もう一人は大きい盾を持った勇者の仲間だ。


「おお!勇者様の仲間もいるぞ!!!俺たちはもう安心だ!」


「おおお!!!」


「勇者様!勇者様!勇者様!」


皆にチヤホヤされて勇者パーティーはすこし照れ臭くなる。


「さあさあ、勇者様、私達の感謝の気持ちです。宴を準備しますので、中に入って下さい!」


「有難く貰うことにしよう」


町の村長に招かれてついていくと誰かが大声を出した。


「おい!空に何かあるぞ!」


村人の叫びに勇者パーティーは空を見上げる。


空から黒い物体がどんどん降りてきた。


「あれは何だ!?」


勇者達は剣を構える。


そして、黒い物体から人が降りてきた。


黒目、黒髪。


凍えるような無表情の顔。


外見では勇者と同い年の少年に見える。


「黒髪・・・!あれは・・・!悪魔だ!」


「ひいいいっ!!!」


村人が怯えている。


「アクシア、ウィルスは?」


少年は腕輪に声をかける。


『分析・・・結果、人間による消滅。』


「そうか」


少年は空を見上げる。


すると飛行船が降りて、少年を乗せてそのまま去って行った。


村人や勇者たちも何も言えず、ただ見るしかなかった。


村人たちが宴会を広げてくれたが勇者は何故か気が進まない。


セリア、通称【勇者】は空を見上げる。


「あれは何だったんだ・・・?」


村人たちは悪魔だと読んでいたが、なんだか違う気がした。


何より、魔物が近づくと輝く聖剣が彼の前では光を出さなかった。


それに空に浮かんでいた物体・・・あれはなんだったんだろう


「よ、一人で何してる?」


声をかけられて後ろを見る。


茶色の髪、身長二メートルの誇る勇者の盾役【カリム】だ。


「うん。すこし、昼のことを考えて」


「あれか・・・確かに怪しい物体だっだぜ。何だったんだろう」


「それもそうね」


「まあ、そんなの気にしないで宴を楽しみましょうぜ!久しぶりのお肉に俺の筋肉が喜んでいるぞ!」


「昨日も食べたじゃないか。ふふ。そうね・・・後で考えましょう」



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