マジックシャドー

ひかげ

プロローグ

私は、小さな村に生まれた平凡な子供だった。

勉強は平均、よりも下。

魔法力、地味、無能。

唯一自慢できると言ったら、顔と肌の白さ。

眉毛は丸っこい不思議な形だけど、黒い髪と目は、白い肌を際立たせてくれる。

瞳も程よく大きく、キラキラ、クルクルと光に反射してきらめいている。


魔法が盛んなこの国で、誇れるものが容姿だけって、ちょっと泣けるよね〜


でも、こんな無能な私でも、頑張ったことが一つある。

三日坊主で、何やっても続かない私が、6年間続いたこと。それは


幼馴染を守ること。


私の幼馴染アイリスは、髪と瞳、どちらにも明るい色を持って生まれた、奇跡の子だった。

魔法力は【癒し】。次期聖女なんじゃないかって村の人は騒いだ。

でも、騒ぎ祀る以前に問題があった。


人攫いに遭いやすいのだ。


働かない大人のために、私頑張ったんだよ。

苦手な魔法力使って、人攫いである私よりも何倍もデカイ男どもを蹴散らして、蹴散らして蹴散らして…でも、結果悪いのは私。

人攫いに遭遇して、帰るのが遅くなったら『どこに連れ回してるんだ!』と私のせい。

逃げてる時に転けて擦り傷を作れば『どうして怪我をさせたんだ!』と私のせい。


正直、辛かった。疲れた。苦しかった。

でも、大切な幼馴染のためだったから、頑張れた。6年間、ずっと。ほぼ毎日。


まぁ、お陰様で魔法力のコントロール能力が上がったから良いんだけども。



そんな日々が続いて、12歳になったある年。

いつものように、人攫いを蹴散らした後、アイリスの方は振り返れば、金髪の立派な服を着た同じ年頃の少年が、アイリスの手を引いていた。

新手の人攫いかと思い、即座に割って入る。

精一杯睨みつけて、誰だ、と聞くと


『我が名はオルリア・フォン・ルスト。この国の第二王子だ。此度は聖女殿を迎えにこの地に舞い降りた』


そう言って、髪をかきあげこちらを見るのだ。ウィンクをして。

正直な感想を言うね。



スッゴク気持ち悪かった。



いや、だって想像してみ?

見ず知らずの女に、ニコォってあんま〜い笑顔浮かべて髪かきあげるんだよ?

私は無理だぁ…他人にそんなことされるのは。


まぁとにかく。第二王子と名乗ったそいつは、アイリスのことを見て『聖女殿』と言った。

チラッと隣を見てみれば、アイリスは頬を染めて瞳を輝かせている。

…この時は、王都の方が安全かな、と思った。いや、今も思ってる。でも……でも、託した相手が間違いだったのだ。

第二王子は、私が身を引くなり、周りの騎士に私を襲わせたのだ。

突然のことに気を取られ、初撃は入れられた。腹に一発。咳き込む私を驚いたようにみるアイリス。

第二王子が何事かをアイリスに言うと、アイリスの瞳の中に映る感情が変わる。

あれは


軽蔑、嫌悪。



私はこの日。大切な幼馴染と、その幼馴染との友情。そして村での居場所さへも奪われた。




第二王子、マジ許すまじ…!!!

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