ワイルドスピリット〜赤〜2

はすき

第1話 新しい道

「……ねえ、何考えてんの。」

あれから約1年。もうだいぶ前のような気がしている。

桜がチラチラ舞っており、こんな綺麗な景色を綺麗だねえって眺めてた幼い自分からは10年。それはつい最近のような気がしている。

「付き合おうよ。僕と。」

彼女は3人目。新たなバイト先のお姉さん。

「隠してることあるでしょう。」

24歳らしいこの人は、僕が隠そうとしていることなんて言わなくてもお見通しのようだ。

「だめかな、隠していることがあるのは。」

だめに決まっている。自分でもそう思っている。

「好きって言うなら、付き合って欲しいなら、最低限言っておくべき事があると思うのだけど。」

真面目そう。至極真っ当なことしか言ってない。この人のことを魅力的だなと思ったのは、この真面目さと、ちょっと天然なところが好き。やっぱお姉さんって魅力的だ。

「シたいだけなら、あの子のほうがカルいわよ?」

親指で明るいフワフワした、お姉さんと同期の女の子をくっくっ。と指す。

「やだな、シたいだけなわけないじゃん。俺はちゃんとお姉さんが好きだよ?」

嘘じゃない。好きな人が何人もいるだけ。

ーチロリンー

「……通知鳴ってるけど。カノジョさんでしょ?」

「ううん。恋人。」

恋人と彼女。言い方が違うだけでは?という顔をする。

急いで返信をカタカタし、お姉さんに迫る。

「……ね、お姉さん、いいでしょ?付き合ってよ。俺、上手だよ?」

首筋をチロっと舐める。

ガタガタと音を立てて椅子が壁にぶち当たる。

「私あなたみたいな人、嫌いだわ。」

ガタガタした太ももで俺の太ももを


がっと


蹴る。

「あなた、いい加減にしなさいよ。……そうやって、あなたみたいな人は沢山の人を泣かせてきたんだわ。」

メガネをとってカーディガンで涙をささっと拭き軽い足取りで帰っていく。

「あーあ。失敗失敗……。」

失敗〜。



「……誰かっ助けて……。」



1年たって。

ラーメン屋の店長に言われた一言がすごく胸に突き刺さっている。


"もう、いい加減にしないか。若いからって許されることとそうでないことがある。"


「僕だって……好きでこんな……。」


まだ、桜は散り始めたばかり。



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