猫な彼女と雨

@山氏

猫な彼女と雨

「うー……」

 恨めしそうに咲弥は窓から外を眺めている。

 今日は咲弥とデートする予定だったが、あいにくの天気で外に出れなくなってしまった。

「明日は晴れるみたいだよ」

「でも……」

「ほら、機嫌直して。ココア出来たよ」

 俺は作ったココアを机の上に置いて、窓際で外を睨んでいる咲弥の頭を撫でた。

「明日は晴れるみたいだから、明日行こうよ」

「明日学校あるじゃん……」

「終わってからでもいいよ。他の日でもいいし」

「じゃあそうする」

 咲弥は窓際から離れると、炬燵に入ってココアを飲み始めた。俺も咲弥の横に腰かける。

「今日、どうしよっか」

 俺が聞くと、咲弥はマグカップを置いて俺の方を見た。

「どうするって?」

「雨で外に出たくないだろうし、雨の中家まで送るのもなぁって」

「明日やむんだよね?」

「うん、予報だとね」

「じゃあ、泊ってく。明日ニ限からだから」

「ん、わかった」

 俺は咲弥の頭を撫でて、ココアを飲む咲弥の様子を眺めていた。

「明日、どこ行きたい?」

「んー……」

 咲弥がココアを飲み終わった頃、俺は咲弥に聞いた。咲弥は俺に寄り掛かって、考えるような素振りを見せる。

「啓人の家」

「いいの?」

「いいの」

 咲弥は笑うと、寄り掛かっていた体を倒して俺の太ももを枕にした。

「……ねえ、頭撫でて」

 俺の顔を見上げて、咲弥は言った。

「仕方ないなぁ」

 俺はため息交じりに笑って咲弥の頭を優しく撫でる。咲弥は気持ちよさそうに目を細めた。

「寝るならベッド行きなよ?」

「んー、大丈夫」

 聞いているのか聞いていないのかわからない返事をして、咲弥は寝転がる。

「……咲弥?」

 しばらく頭を撫で続けていた俺は、咲弥に声をかけた。

 返事の代わりに、安らかな寝息が聞こえてきた。

「もう……」

 俺は咲弥を起こさないようにゆっくり咲弥を動かして立ち上がった。

 部屋から枕を持ってきて、咲弥の頭を乗せる。

「んん……」

「ごめん、起こしちゃった?」

「……んー」

 咲弥は寝ぼけ眼で枕を頭の下から退かして抱きしめる。

「おやすみ、咲弥」

 俺は咲弥の頭を撫でると、コーヒーを作るためにキッチンへ向かった。

「あ、雨やんでる……」

 キッチンに向かう途中、窓から外の様子が見える。空は雲に覆われていて少し暗いが、雨はあがっていた。

 コーヒーを作って机に戻った時、咲弥を起こそうかと考える。

「……」

 しかし、咲弥の心地よさそうな寝顔を見て、起こすのをやめてコーヒーに口を付けた。

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