第4話 神崎
昨晩の睡眠時間の不足と、先程の思いもよらない絶望感のせいか若干の頭痛に襲われフラフラする。
一限目が体育の授業であったが、体育の教師に体調不良を申し出て欠席をお願いする。
保健室へ行くように勧められたが、そこまでではないと断った。
少し、夏日のように気温も暑くなってきたので、校庭での見学も酷だろうと、大事をとって教室で自習という形にしてくれた。
男女共学校になると教師も若干優しいような気がする。
前の学校では、少しくらい熱があっても無理矢理に授業に参加させられたものだった。
本当は、気分が悪いというよりは寝不足なので、少し眠らせてもらえれば体調は回復するであろうというのが本音なのである。皆が、体育に参加する溜めに教室を出た後、一人で席に座る。
いや、もう一人、窓側の横の席を見ると、アイツがまたもやイヤホンを耳にして机で寝ている。相変わらず、同じように机の上に腕を組み、そのまた上に頭を乗せて気持ちよさそうに目をつぶっている。
本当にコイツは、一日中よく眠れるものだと感心する。その分、夜遊びでもしまくっているのかと勝手に想像してしまう。
寝ているコイツを起こさないようにして、窓際に移動して、校庭で行われている体育の授業の様子を眺める。
男子は走り幅跳び、女子は中距離走りのようだ。
男の
こういう風景を見ると、今回の転校で編入先を選択する際に、男女共学の高校を選択した自分に誤りは無かったと確信する。
校庭の隅で三脚を立ててビデオ撮影をする男の姿が見える。
「あれは、たしか……」その男は、俺のクラスの担任教室の中津だった。
たしか、中津は写真部の顧問だったような気がする。
ビデオカメラを使って、学生達の活動を記録しているのかもしれない。
卒業の時に流したりするのであろうか。
ただ、ちょっと、女子生徒の撮影比率が多いように感じるのは、やはり俺と同じく男の
窓際で居眠りしている奴が寝返りのように通路側に顔を向けた。
「お前も体育の授業は欠席か?」俺は、イヤホン越しに聞こえるような大きな声で聞いた。
「気安く、お前って言うな。ダルいんだよ体育は」そういうと窓の側に顔を向けて再び、机に顔を埋める。まだ寝足りないようである。
「たしかにな……」俺もその意見には同調する。
外は快晴で、絶好の体育日和のようだ。でも、こういう不良っぽい奴には太陽が似合わないのかと思った。
「なあ、副生徒会長の逆瀬川ってどんな人なんだ?」俺は唐突ではあったが、客観的に綾がどう見られているのか確認したい衝動にかられた。
「性悪女」
「いや……」
「根性ババ色女」
「えーと……」
「好色一代女」
「もういいや……」そこまで言うか。
あやの悪口のオンパレードで、耳を塞ぎたくなった。
「お前、あんな女がタイプなのか?」珍しく顔をこっちに向けて聞いてきた。
「いや、幼馴染なんだけどさ、なんだか昔と雰囲気が変わってたから」俺は頭に腕を組んで天井を見上げた。
「ふーん、そうなんだ……、たしかに昔はあんな感じでは無かったな」そう言って、また窓の外に顔を向けた。どうやら、コイツもあやの事はよく知っているようである。
「お前、体育休んでいるけど体調でも悪いのか?」特に話題がないので聞いてみる。
「うーん、体調もそうだけど、気分も乗らないし、まあ色々あって俺は運動出来ないだ。それと気安くお前って言うなって!」一応、質問には答えるようだ。
ふと、名札に目がいく。『神崎』それがコイツの名前のようだ。
「分かったよ、神崎」早速呼んでみた。
「……」しかし返答は無かった。
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