僕が嫌いな雪村さん

ダンチ

第1話

朝起きると、一番最初に思い浮かべるものとはなんだろうか。

僕は、あの人顔が思い浮かんだ。

夢で出てきたからだろうか。

あの人は僕が通ってる学校で一番の人気者。


「おはよー。今日も冴えない顔してるね」


初めて会話した時に彼女が言ったのがこれ。

僕は彼女の事が好きじゃない。

初対面で「冴えない」とか言われて好きになれるはずがないだろう。


「おはよ。冴えないくん」


「僕の名前は佐奈井だ。『え』は余計だ」


「あら、ごめんなさい。冴えないくん」


うぜー。

なんだコイツは。

今日もコイツは絡んでくる。

コイツの名前は雪村桃華(ゆきむらとうか)。

学校一の美少女と評判だが、性格は残念と言われている。

そのせいで友達少なく、男関係の噂なんて一切聞かない。

現在も僕が放課後の教室で係の仕事をやっている最中ひたすらにダル絡みしてくる。

教室には僕と雪村しかいない。

教室の隅で日誌書いてる僕の目の前にドンと座りずっーと話しかけてくる。


「無視はやめてこっち見てよ。佐奈井くん」


めんどくさい。

僕はひたすらにスマホを見続ける。

黙っていれば良い。

マジで。


「んー、暑いな。この教室。ねぇ佐奈井くんもそう思わない?」


確かにそう思うが、どうしよう。

コイツに賛同するのなんかヤダ。


「でも窓は開けないでくれよ。今日は風強いんだから、教室の物が飛ぶ」


「んんーならエアコンは?」


「すぐ帰るだ。僕たち二人の為に付けるのはもったいないだろ」


「えー、ケチー」


そう思うなら、さっさと家に帰ってくれ。

そして僕を一人にさしてくれ。


「なら、胸元のボタン外そ。こっち見ないでよ」


……。

ヤバイ、ちょっとみたい。

僕も男だ。女子が露出するというのはとても興味深い事である。だがしかし、今この状況で雪村の方を見たら確実に変態扱いされてしまう。明日から僕のあだ名「エロ井くん」とかになったら僕は死んでしまう。僕は冴えないままでいい。だが、みてみたい。女子の胸をみたいと思うのが男子だ。なんならわざわざ「胸元のボタン」と雪村が言っているんだ。見ろよって言う遠回しの合図なのではないか?なら、チラ見だ。ほんのちょっとみるぐらいなら許してくれるだろう。なんならバレるか。顔は動かさず、眼球だけ動かす。これこそ人間の持つ最大の力じゃないか。なら、勇気を振り絞ってみるしかないじゃないか。神様よ、ありがとう。今からみます。


「えっち……」


なぜバレた。

確かに少しだけ胸の谷間を見たけども。

そういえば女性は自分の胸が見られているかどうか分かるという話を聞いた事がある。


「ごめん。雪村。つい出来心で」


「あっ、ほんとに見たんだ」


は?

まさかコイツ。


「鎌かけたらほんとにかかった。正直者だね、佐奈井くん」


クスクスと笑いながらボタンを閉める。


「あーもう。なぁ雪村。そう言う事は好きな人にしかしちゃいけないと思うぞ」


「えへ。真面目ちゃんだ」


はぁ。

コイツは羞恥心ってモノがないのか。


「じゃっ私帰るね。バイバーイまた明日」


「うん、じゃあな」


僕は日誌から目を逸らさず、テキトーに返事する。

雪村はタッタと小走りで教室をでる

アイツの事もう二度とみたいと思わない。


「あ、それとねー。そういう事は好きな人にしかしてないつもりだよー」


僕はその言葉を聞くと、ビクッと顔を上げた。

その時雪村はもういなかった。

なぜだろう、雪村の顔が無性にみたくなってきた。

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