きみの嘘、僕の恋心
朝の目覚め具合で朝ご飯のおかずを決めるようになったのは、きっとあの日からだ……。あの日から、僕の世界はまるで違って見えた。
きっと、僕は彼女に影響を受けすぎている。
今日の目覚めは最高だった。なぜなら夢の中に彼女が出てきたからだ。夢の中で、僕と彼女は両想いだったのだ。これはもしかするともしかするかもしれない。
目覚めが最高だった場合、おかずは目玉焼きだ。
僕は早速目玉焼きを焼くことにした。フライパンに油をひいて、火をつけてベーコンをのせる。ジュゥという食欲をそそるいい音がした。そしてさらに、卵を落とす。先程よりも大きな音を立てた卵の白身が周りから白くなり始める。ここからはフライパンに蓋をして待つ。僕は半熟が好きなので、タイミングを間違えないように細心の注意をしなければならない。
二分ほどして蓋を開けると、丁度いい感じの黄色が見えた。
グッドタイミング。
僕はそれを皿に載せて食卓へ運んだ。主食のパンはすでにバターを塗って机に準備してある。目玉焼きを食卓に運び終わったタイミングでコーヒーの完成を知らせるピピピという音が鳴った。
今日は本当に最高の朝だ。本当に、本当に、もしかするかもしれない。
さあ、いただこう。
僕は手をパチンと合わせて神に祈った。
――いただきます。
いきなり目玉焼きをつつきたいところだが、健康を考えて目玉焼きに添えたキャベツを頬張る。
すべてキャベツを食べ終えて、ついに、僕は目玉焼きをつついた。黄身がとろろんと流れ出くる…………………………………………はずだった……。
え、嘘でしょねえねえねえ!
あんなにタイミングを見計らって上手く焼いたはずの目玉焼きが。
……半熟じゃ、ない。
今までこの黄身の色で半熟じゃなかったことなんて一度もなかったのに。
――ああ、黄身に嘘をつかれる日がくるなんて。
やっぱり夢のようにはいかないんだな。
僕の彼女への恋心は。
半熟の黄身への恋心は、
弄ばれて、
呆気なく消え失せたのだった。
ちなみに、近くのスーパーの卵が90円という安さだということに気づいてから、彼の朝ご飯のおかずが目玉焼き以外だったことは、今までに一度もない。
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