真最中~騙されましたね~
僕と拓也は久しぶりに田舎町の故郷に帰ってきて、小さい頃によく通っていた駄菓子屋に顔を出すことにした。
「あのおばあちゃん元気にやってるかな」
「きっと今も元気に笑顔を振りまいているに違いないね」
そんなことを話しながら駄菓子屋の前まできた。駄菓子屋の前に一つ、看板が出ていた。そこには「今フェア真最中!」とかいてある。
「なんのフェアかな」
「たしかに、こんな小さな町でフェアなんて、ねぇ」
そんなことを言いながらも「フェア」という言葉にわくわくしながら駄菓子屋内に入ると、奥からあの頃と全くと言っていいほどかわらないおばあちゃんが出てきた。
「こんにちは、おばあちゃん。僕たちのこと憶えてますか?」
「えっと……あぁ、君は太一くんで、君が拓也くんだったかな」
「はい! そうです! 憶えていてくれたんですね」
「そりゃぁ、あんなに元気な二人組だったんだからねぇ」
僕は先程の看板のことを訊いてみることにした。
「ところで、店先でフェア真っ最中という看板をみたのですが、なんのフェアなんですか?」
そう言うとおばあちゃんは不思議な顔をした。
「ん? なにって、
「え、しんもなか?」
「あぁ、そうかいてあっただろう?」
「その、真最中というのは?」
「
「はぁ……あ」
たしかに、真最中とかいてある。「まっさいちゅう」と読むなら真と最の間に小さいつが入る。
……フェア真っ最中ではなく、真最中のフェアということか。
おばあちゃんは奥に戻って行き、例の真最中を持ってきた。
「ほら、食べなさい」
「いいんですか! いただきます」
真最中は本当に真の最中だった。
「騙されましたねぇ。クククククク……」
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