〈キミニハコレガナニニミエル?〉

「これは人の心です」

〈ドウシテソウオモウ?〉

「愛と憎悪が重なって存在しているからです」

〈アイッテドンナモノ?〉

「さあ、僕には理解できません。好きな人のことを想うのも愛だし、自分の子どもを思っての暴力も愛になるそうで、なぜ真逆のものが同じ愛なのか、僕の脳では到底理解できるものではないのです」

〈ナラ、ゾウオハ?〉

「憎悪はわかります。憎み嫌うことです。人に対しての憎みでも戦争などに対しての憎みでも同じ憎みです」

〈キミハアイトゾウオノドチラガスキ?〉

「僕は憎悪の方が好きです。人の心の奥のものが憎悪だと思います。普段優しい人でも憎しみや怒りはあるはずです。でもそれがある場所は心の奥底だから、周りの人はその人の負の感情に気づきません。愛よりも憎悪の方がその人の真の性格に近いと思うのです。だから、僕は口だけの愛よりも、憎悪が好きです」

〈ソレナラ、キミノココロニアイはアル?〉

「さあ、どうでしょうか。僕には大切な人がいますが、その人を愛してるのかは定かではありません。その人のことを考えると心がモヤモヤしますが、それが愛なのかはわかりません。もしかしたら憎悪かもしれませんし、ただ心が痒いだけなのかもしれません。それに、僕に心があるのかも少し危ういところですしね」

〈デハ、ソノヒトトズットイッショニイタイトオモウ?〉

「はい。独りは苦手なのです。僕に自ら近づいてきてくれたのは彼女ただひとりなのです。そんな人は大切にしなくてはなりません。ずっと一緒にいたいです」

〈ソノヒトヲシアワセニスルカクゴハアル?〉

「どうして幸せにする必要があるのでしょうか。僕が幸せにしなくても、彼女はもう幸せだと思います」

〈ドウシテ?〉

「だって、生きてるでしょう? 僕は生きてることが幸せです。だからここにいるわけですし。どんなに苦しいことがあっても、それが不幸になるわけではありません。苦しいことがあるのなら、きっと楽しいこともあります。世界はそんな風にできているのです。まるで愛と憎悪みたいに。そんな世界に、僕は戻りたいのです」

〈コレデシツモンハオワリ。キミハゴウカクダヨ〉

「では、僕は生まれるかわることができるんですね!」

〈ソウダネ。ハヤクイッタホウガイイ。キミノママがマッテル〉

「はい。行ってきます」

〈アイトイウモノヲリカイシテキナサイ。ソウシタラキット、マタタイセツナヒトニアエルヨ〉


 生まれて初めて聴いた声は、僕の大切な人の声だった。

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