第88話 相談事
どうしよう、どうすればいいんだろう。
私は考え続けた。
どうすれば、穏便に済むのか。何をすればいいのか。
考えたけれども答えは出なくて、時間だけが過ぎていくのを肌で感じた。
「どうしよう」
思わず漏れ出す言葉。
心から出た言葉だった。
誰か助けてよ。お願い。
私は、あの時の、今までの自分を恨んだ。
私は今までは、他の子から考えや不満、不安、悩みを聞く立場の人間だった。だがいざ自分がその土地場になると途端に分からなくなった。
てきとうに相手をしていた子に今なら全力で謝りたい気分だった。
「分からないよ」
放課後、誰もいない教室。
私のぼそっと呟いた声が響いた。
「…助けて」
その時、丁度ドアが開いた。
入ってきたのは、新條結人君だった。
彼はこちらをチラッと見て私が見ていることに気が付き手を振ってくれた。
「委員長は部活行かないんですか」
「…え、ああ、行く。行くよ」
「…?…っあ。もしかして僕がいること分かっていて教室閉じるの待っていてくれたんですか?」
彼は、不思議そうな顔をした後、思いついたかのようにそういった。
「そ、そうだね」
「…。あの、違っていたら申し訳なんだけれど、なんか悩んでる?」
「え!?い、いや、その…」
図星をつかれて思わずひきつった声を出してしまう。
「そ、そんなことないよ。私、悩み事なんてないから」
「…そうですか。分かりました」
「…う、うん」
そう言って彼は、荷物をカバンにつめ教室を出ていこうとする。
…あぁ、私って本当にバカ。
自分のアホさに嫌気がさす。
思わずうつむいてしまい、涙が出そうになった。
「ほら、やっぱり悩んでる」
私の顔を覗き込み、そういった彼はにこっと笑った。
…なんで?帰るんじゃなかったの?
私の考えとは裏腹に新條君は私の前の席に座り「委員長も早く座って、ゆっくり聞きたい」とこういうのだ。
「…どうして?」
「だって、今日の委員長なんかずっと悩んでそうな顔してたから。みんな心配そうな顔してたよ?」
「…そんなに?」
「うん」
表には出さないようにしていたつもりだったが、どうやら出ていたみたいだ。
…。………。
「え、あ、ちょっと、泣かないで」
「…ご、ごめんなさい。嬉しくて、恥ずかしくて」
そして、彼は私が落ち着くまで隣にいてくれた。
それがまた一層嬉しかった。
「それで、何があったの?」
「その…」
私は、事の発端を喋り始めた。
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お久しぶり?です。kanikuiです。
新作の恋愛もの「冷たい彼女の落とし方」を出します。
純愛ヤンデレ物です。読んでくれるとありがたいです。
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