第28話 受験と応援
「はぁ......」
三月某日。今日は凛さんの受験一日前。
僕の気は重かった。
なぜなら、昨日......
「兄さん」
「結人君」
夕食を作っていた僕のもとに二人が歩いてきた。
これは、もしかして......夕飯のリクエストなのか?あとちょっとでできてしまうけれど、二人からの初めての夕飯リクエストなら喜んで今からでも作る。絶対。
僕はわくわくしながら、待っていたけど発せられたのは
「兄さん......受験合格祝いと誕生日分。二回やろうとか思ってないよね?受験終ったあとなら大丈夫とか思ってないよね」
「......いや、そんな事ないよ」
「ほんとに?」
二人にじっと見つめられる。
なんでばれたんだろう。...........うぅ。二人に嘘は吐けない。
「...........そんな事思ってました」
「もぅ。私たちは一回分だけでも十分嬉しいから二回はやらなくていいよ」
「でも......僕の気持ちが収まらなくて」
「その気持ちだけでもうれしいから」
二人にそう言われては、食い下がるわけにもいかず、受けてしまったけれども...........。
やっぱり、何か返したい。
そう思いながら、明日の凛さん用のお弁当の下準備を終え、自室に戻る。
母さんにものすごい頭を下げて作らせてもらった。母さんも作りたかっただろうけれど、どうしても何かしたくて。
その代わり、合格祝いの時は母さんが作る事になったけれど。
ふと、机に飾ってあった栞を見る。
……これだ。
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「止め。ペンを置いてください」
ふぅ...........これで、午前中は終わり。
今のところ大きなミスはない。数学の計算が少しだけ狂って時間ロスしてしまったけれど、高得点は狙えそうだ。
周りを見ると各々お弁当を食べ始めている。流石に、この時間に友達と一緒に食べようと思う人はおらず、教室は静かだ。
私も食べて、少しだけでも午後の社会の単語でも覚えておこうかな。
そう思い、ランチバックを開ける。
すると、一枚の大きな付箋が張ってあって
『合格祝いしっかり祝わせてもらいますから。僕の言葉なんかじゃやる気出ないかもしれませんけれど
『頑張ってください!』
.........もぅ...........余計な気を回しすぎよ。家を出るときもお母さん以上にそわそわしていたし。
申し訳なさそうな、自分の弟の顔が浮かぶ。
最初のころの私なら、こんなものゴミだと思っていただろうけれど彼の事を信じてみようと、彼としっかり向き合っている今は...........。
ふふっ。なんだか微笑ましくて。
私は、その付箋の裏にこう書いた。こう言ったら絶対に受からないといけないなぁ。
『ありがと。合格祝い楽しみにしてるね』
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