ぬくもりに包まれて

 ある日私の元にやってきた人の子は、おもむろに地面を掘り進めていく。

 タイムカプセルを埋めるには時期が早い気もするし…。

 いったい何をしようとしているのかしら。

 私の根を傷つけないように丁寧に掘り進めて…。

 そして掘った穴に入ってしまった。


 しばらくすると、雨が降り穴を塞いでしまった。

 このままでは、人の子が死んでしまう。

 私には手も足もなく、誰かを呼ぶための口も声もない。

 せめてもと、根を人の子に絡ませて…護るように。

 すると、人の子から何か聴こえてくる。

 これは、【音楽】というんだっけ?

 しばらくすると、今度は映像が流れてくる。

 これは…【映画】それとも【ドラマ】だったかな?

 どこにも行くことのできない私に、人の子はたくさんの世界を見せてくれるのね。

 胎教とはよく言ったものだ。

 私は胎児にたくさんの世界を教えてもらえるんだね。

 今までにも、たくさんの命がそれぞれの世界を観せてくれたけれど…。

 そのどれよりもキラキラしていて、そしてよどんでいるのね。

 君が私と共に生きようとしてくれているのなら、気に入った。

 私の命が尽きるまで、共にこの星を見届けようではないか。

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