(雫のイラスト)

桜木 彩

桜が咲いたころ

 桜の花びらが、無慈悲に踏みつぶされる季節が来ました。

 僕はまたこの花びらたちのように、目には見えない『何か』に踏みつぶされながらも、『何か』が正当化されている世界で生活するためには、門を開かなければならない。


「ねぇ、見て。桜並木すごく綺麗ね」


 そんな会話を聞きながら、学校へ向かう生徒達を眺める。

『綺麗』と評価をしながらも、その対象を踏みしめる。

 評価されるのは、咲いてから散るまでと散って地面に触れた瞬間。

 ここまでしか評価はされない。

 人間達に踏まれた花びらは、ゴミと同じ扱いを受けてしまうから。

 なんだってそうだけれど、誰の手も触れていないものだけ特別な評価が受けられる。


 そして時々思うんだ…。

 僕達学生は、まるでこの桜と同じなんじゃないかって。

 一年生はまるで蕾。

 新しい環境でどんな風に接していいのかも分からず、まだ扉を閉じている状態。

 じっくりと、たっぷりと栄養(知識)を投与される期間。

 二年生になると花開く。

 どんな風に立ち回っていいのかがわかり始め、カーストと呼ばれるピラミッドも完成する。

 しかし、花開けずに蕾のまま終わってしまう場合もある。

 三年生になると散っていく。

 自分の進路に悩み迷走し、集団から個々で生きていくために。

 地に落ちた花びらは、運が良ければ綺麗なまま燃やされるが、運が悪ければ踏みつぶされてぐちゃぐちゃに。

 さて…。今同じ桜並木を歩く群れの中で、何人が綺麗なままでいられるのだろうか。


 僕は、花を咲かせることが出来るのだろうか。

 それとも、蕾のままで終わってしまうのだろうか…。



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