第3話 過去の呪い

刀祢とうや幼少期


「何見てんだよ」


「ちょっと、顔はやめときなって。学校でバレたら面倒だからさぁ。」


 その部屋には男の殴る音と男女の会話が聞こえた。


「はぁ、知らねぇよ前の男の子どもなんだろ」


「あーぁ、こんなんなら産まなきゃ良かった」


 そう、刀袮は、恵まれない子供だった。


 刀袮の母親は売女。そしてその際に客とできた子供が刀袮だ。母親はそのままうまく言いくるめ結婚をしたが、店員と客、体だけの存在。うまく行くはずもなく、刀祢が5歳のころに離婚。


 だが直ぐに新しい男との3人暮らしが始まり終わりを繰り返す。母親は元旦那からの刀袮への養育費で生活していた。


 刀袮は服も食事も満足に与えられず、押し入れから出ることさえ許されなかった。出る時は、学校以外は男に殴られる時が基本であった。


 いつの頃か刀袮は、世界は平等ではないと悟る。


 男がいなくなると母親はまた売女を始める。


 とある日、母親は男を家に呼んだ。その時、刀袮は押し入れに詰め込まれた。


 そして刀袮の運命を変える出来事が起きた。


 いつものように、押し入れにいるといつの間にか刀袮は寝てしまっていた。そして起きた時には押し入れのドアが半開きになっていた。


 ガタッ


 押入れのドアが開き刀祢は転げ出る。


「チッ、聞いてねーよ。子供がいるなんて」


 そんな捨て台詞を言い残すと男は服を着て出ていく。


「あんたなんか、いらない」


 すると母親は壊れたように「いらない、いらない」と繰り返しながらキッチンに向かう。自炊しない母親であったが包丁の1本ぐらい入っている。包丁を持つと母親は刀祢に向かって一直線に走り出す。途中、テーブルクロスをひっくり返し上に置いてあった袋や注射器を落としながら。


 その時の、刀袮は包丁を持つ母親を見て何も思わなかった、否、思えなかった。包丁が安全なのか危険なのか、刺されるとどうなるのか、痛いのか気持ちいのか。


 その時だった。


 ガシャン、バァン


 扉をけ破る音。




「警察だ!!」


 そこには、銃を構える警察。


 同じアパートの人間か誰かは知らないが、誰かが通報したのだろう。警察が突入し刀袮は母親から、突如として開放された。


 その後、母親は逮捕。刀袮は施設に入れられた。


 そこで、刀袮は知識をつけた。今まで知らなかったことを、知れる。そんな事が刀袮の好奇心を掻き立てた。


 だが刀袮は学校でイジメられてしまう当たり前の権利のごとく。


 子供のことだ、施設に行っている、親がいないそんな事で共有の敵を作り数で暴力を振るう。まるでそれが正義だとでも言いたげに。


 そして刀祢は、独学で武道を学ぶ。途中からは施設の人に教えてもらった師範に学ぶ。


 そんな事があったからだろうか。刀祢は目の前のヤルダバオトを見て自分の幼いころと重ねてしまう。


 そして刀祢の中の感情が変わる。

 恐怖から勇気に、恐怖から殺意に。

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