第2話 死

眼前にあるのは、現実世界で見る事の無い程に、非常識な大きさの扉。


「お家ってどう言う事だよ?」


「どうってそのままの意味だよ。君だって、家はあるだろ?それと同じさ、まぁ、ここに住んでいるのかと問われれば、違うけど」


「そ、そうか」


 刀袮は納得の声を上げるが、理解はできていなかった。そして、もう一つ質問をする。


「で、でも扉はあっても建物も何もないじゃないか」


そう、確かにそこに扉こそ存在するが、他は今まで通りの、白い空間だった。


「まぁ、この扉は入ればワープできる感じだからね」


「へ、へぇ。ん、いやいまワープって言ったか?」


刀祢は、少し前の嫌な記憶を思い出す。それは、この空間に来た時だ。


「なぁ、それってまた気持ち悪く」


「あぁ、それは大丈夫だよ。まぁ、色々質問はあるだろうけど、そのへんは、おいおい説明するから、取り敢えず付いてきて」


 そう告げると、ヤルダバオトはおもむろに手を前に出すと、その扉を押した。


ギィィィーー


するとその扉は大きな不協和音を上げながら開いていく。


 その先にあったものは黒。他の色の侵入を許さないただ一色の黒。


 そんな事を思っていると、ヤルダバオトと後ろに居た、ゲッケイジュは黒一色の世界に入っていった。


刀祢は、無理やり自分を納得させると、ヤルダバオトとゲッケイジュの後ろを着いていく。


 豪華な扉の中にある黒一色の世界へと入っていく。


 扉の、あったものは、学校の体育館程の広さのスペースに食事や飲み物などがのったテーブルそれは、立食パーティーの会場の様な場所。そして倒れた、おそらく死亡しているものもいるだろう人や、中には頭部を中からぐちゃぐちゃに潰されたものまである。


「う、おげぇぇ」


 刀祢は、思わず膝をつき嘔吐する。目の前の光景は刀祢の人生ではまだ見ぬ光景であった人の死などなかなか巡り合えるものではない。


「そこでなにをしているんだ?」


 ヤルダバオトは驚いた表情をしながらも冷静に問いかける。


 そこには、真っ赤に染まった赤の甲冑男が一人、少女の首を締め上げ佇んでいた。片手には、両刃の剣を持っていた。


「遅いな。もう少し早く来ると思っていたんだがな」


 そうゆうと赤甲冑は首を締め上げていた一人の少女を後方に飛ばした。


 刀袮は何が起こったのか理解出来なかった。まるで映画のワンシーンを見ている様な感覚だった。


「なんなんだよ」


刀袮が、そんな言葉を、溢すと、赤甲冑がこちらを向く。


「最後の一匹か。まぁいいだろう、いまここで」


 そう言うと、赤甲冑は、剣を構え、床を蹴飛ばす。すると、物凄いスピードで、赤甲冑と刀袮の距離が縮んでいく。


 ギィィィィィィン


 さっきまで、遠くにあったはずの赤甲冑と剣が、目の前でヤルダバオトの腕とでつば競り合いをしていた。よく見ると、ヤルダバオトの左手の色がが黒や赤に変色していた。


「早く、扉の外へ」


「はっ、はい」


 先ほどまでと変わって真剣な表情のヤルダバオトに、刀祢は上ずった声をあげ扉の方向へ走ろうと立ち上がる。


「逃がすぅとぉ、、、思っていたのぉ?」


眼前に居た者は刀祢の想像を軽く超える。


「え、だって貴方は」


 刀袮の前にいたのは、ゲッケイジュだった。刀袮が驚いていると、ヤルダバオトがさらに爆弾発言をする。


「か、母さん?」


ゲッケイジュは油断し切った、甘ったるい声を上げる。


「母さぁん。そぉね貴方から見れば母ぁさんかもぉねぇ」


 刀袮の、頭は理解できていなかった。刀袮は、ゲッケイジュの事を、無条件で信用していた訳ではない。そこまで頭お花畑ではない。しかし死ぬなんて思っていない。


 しかし、理解できていなかったのは、刀袮だけではなかった。そう、一番理解できていなかったのはヤルダバオトである。


「貴様ぁぁ。母さんに何をしたぁぁぁあ!!!」


ヤルダバオトは、たかが外れたように、赤甲冑に叫び、殴りかかる。


 その時、ゲッケイジュは、どこから出したのか握っていた戦斧を刀袮の首に走らせようとした。


(軌道は完璧。楽勝♪ あぁこれであの人に褒めて貰える)ゲッケイジュはそう思い、油断し切っていた。


「やめてぇぇぇぇぇ」


 そうヤルダバオトは叫び、刀袮の元に走る。


「逃がすかよぉ」


 突如として、ヤルダバオトの目の前に現れた赤甲冑がヤルダバオトの進路を断つ。


(やばいやばいやばい。このままじゃぁ、、、俺死ぬ)


 刀袮は、人生で二回目・・・の死を覚悟する。

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