少子高齢化のため、異世界からの移民を認めます

ウロノロムロ

プリーストは、ヒーリングで過労死する

天才外科医とプリースト

異世界からの移民者達が

続々と入国して来る日本。


少子高齢化の影響を受け、

著しい労働力不足に悩まされる

アナザー日本にとっては、

まさしく渡りに船ではあったが、

だからと言って

移民者達みなが必ずしもここで

職にありつけているという訳ではなかった。


こちらの人間と同様に

能力が優れた者や

特殊なスキルを持つ者が優遇され、

持たざる者は「キツイ」「汚い」「危険」の

所謂いわゆる3K労働に従事せざるを得ない。


同時に、世間一般からの偏見や

社会的弱者の扱いはまだ根強く、

仕事を探すのも難しい者達、

こちらの人間社会に溶け込めない者達も多勢いた。



だがそんな中でも、

ほぼ百パーセントの就業率を誇り、

いち早くこちらの人間社会に溶け込んだ

スーパーエリート達が存在する。


異世界で聖職者であった者や

白魔法使い、パラディンなどの

ヒーリングの術を使える者達、

彼等は入国の際に特別な契約を交わしており、

こちらの人間世界でも有用と認定された術に限り、

使用を許可されている。


ここは都内の有名大学病院。

ここでも三名のプリーストが採用されており、

いい人材がいれば更に雇用したいと

病院経営者側が切望するぐらいに、

彼女達は重宝されていた。


-


ストレッチャーに乗せられて

救急搬送口から運び込まれる急患。


「容体は!?

どんな状況だ?」


そう問うたのは

この病院の外科医である氷室誠也ひむろせいや

リアルブラックジャックと名高い若き天才外科医。

眼鏡の奥には鋭い眼光、そして表情は険しい。


患者の男性はビルの二階から落下し全身を強打、

幸い一命は取り留めたが、

両手両足、腰等の複数箇所を複雑骨折し重症。


重症患者はあまりの激痛に

呻き声を上げ続けている。


「なぜ麻酔を使わないっ!」


「それが、アレルギー体質の為、

麻酔が使えません!」


「クソッ!」


『ここはしゃくだが、

あいつ等に頼るしかないか……』


類い稀なる才能を生まれ持ち、

それでもなお

たゆまぬ努力を積み重ねて来た彼にとって、

彼女達はにわかには容認し難い存在、

それもまた致し方ないことなのであろうか。



緊急に呼び出されたのは

おおよそ病院には似つかわしくない

純白の修道服を纏った女。

実年齢は定かではないが、

外見だけであれば

まるで少女のようにも見える。


「おい、お前、お得意の術とやらで

このクランケの痛覚をカットしろっ」


「は、はい!」


彼女が手をかざして

詠唱をはじめると

患者の体が青白い光に包まれる。


その光の輝きと共に

重症患者の呻き声は

次第に微かなものとなって

やがて途切れる。


「ふぅ……

終わりました」


額の汗を手を拭いながら

彼女がそう言うと同時に、

ストレッチャー上の患者が

ガバッと上半身を起き上がらせた。


「あれ?」


不思議そうな顔で自らの体を見回し、

手足を動かしまくる患者。


「全く痛くない……

やった! 治った! ははははは」


先程まで青色吐息だった男が

まるで嘘のように元気になり、

辺りを飛び跳ね回る。



「お前!

またやらかしやがったな!」


その様子を見ていた外科医氷室は

そう怒鳴ってから頭を抱えた。


「す、すいません、

間違えて全回復させてしまいました」


白い修道服の女は気まずそうに謝り続ける。


「馬鹿野郎!

どこの世界に医療ミスで

完治させちまう病院があるってんだっ!」


彼女の名はフローラ。

異世界ではプリーストとして聖職に就いていた、

少しドジっではあるが

超一流のヒーリング能力を持っている。




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