2020.5.17 12:36

「姉様屋敷」の茶の間。ドンブロウスキ、三内、銀河が机を囲んでポーランド料理のスープや肉、小麦粉の団子を食べている。


三内:そういえば、昼に駆除業者が来てくれたんですよね?江森くんの言ってた件はどうなりました。

ドンブロウスキ:それが、屋根裏から床下まで見てもらったんですが巣も何もないそうです。たまたま外から入り込んだんではないかと言われました。

三内:それはよかった。ああいう動物は不潔ですからね。

ドンブロウスキ:前にジヨンさんが、「姉様屋敷」というのはどういう意味かと聞いていたでしょう、答えがわかりましたよ。

銀河:何だったんですか?

ドンブロウスキ:業者の人と雑談してたら忌み言葉の話になりましてね。

三内:忌み言葉?

ドンブロウスキ:縁起を担いで単語を言い換えることですよ。するめをあたりめに言い換えるとか……それで、昔は鼠のことを姉様とか、上の姉様と言ったらしいんです。まあ洛本の冗談でしょうね、当時から鼠がいたんでしょう。

三内:作家の自虐ですか。(立ち上がる)ちょっとトイレに。(退場)

ドンブロウスキ:ところで、最近屋根裏に上がりました?

銀河:ああ、はい、まあ。


銀河はあからさまに家主から目をそらす。


ドンブロウスキ:屋根裏には私がこの家を買った時から封印してある部屋があるんですが、そこを塞ぐ板が破られていたんです。誰がやったにせよ鼠の仕業じゃありませんよね。

銀河:……すみません、どうなっているのか気になってつい。

ドンブロウスキ:あのですね、せめて壊してからでも一言あってもいいでしょう。隠し通せると思っていたんですか?

銀河:本当に申し訳ありません……

ドンブロウスキ:まあ今回は許しましょう。たかが腐った板です。隠し部屋も見つかりましたし。あの資料はいずれ大学に寄贈しましょうかね。

銀河:寄贈?


三内が戻ってくる。


三内:何を寄贈するって?

ドンブロウスキ:屋根裏から昔の本やメモが見つかったんですよ。洛本愛作の所有物だと思うので、大学が引き取れば資料室が保管するでしょう。まあ、休校が終わってからですが……

三内:それはいいですね、歴史的発見かもしれませんよ。具体的にどんな?

ドンブロウスキ:それはまだあまり把握していないんです。専門分野でもありませんからね。図書館が開いたら、司書の方に相談してみます。

三内:ローカルニュースになるかもしれませんね。いや、今は洛本のファンも多いから全国かな?魚沼さん、どう思います?

銀河:そうですね……急ぐこともありません、開校してすぐは図書館も忙しいでしょうし、しばらく経ってからでもいいのでは。ところで、食器を下げましょうか?

ドンブロウスキ:そうですね、三内さんも食べ終わりましたか?残りはシチューにでもしましょうかね。


三人は空の食器と、焼いた肉がまだ少し残っている皿を持って退場する。

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