第22話


「ここだぽよ!」


 昼休みに感じた小さな違和感の正体を確かめる時間も無いままに俺達は、いや、私たちは遂に株式会社トッテモワルインデスの支店に、違う、アジトへとやってきた。

 駅近徒歩10分という好立地にあり、大きめの道路にも面している素晴らしい貸しビルには……。


「本当だ! これは間違いないねぇ!」


 大きく「株式会社トッテモワルインデス」と看板がかかっていた。

 ……。

 ……。

 突っ込めねぇええ!! ミラクルの姿じゃ突っ込めねぇ……ッ!! なんだこの看板! おいこら、舐めてんのか!! 何がって? 今の今までアジトを突き止められなかったウサギ野郎のほうだよ!! もう看板出している方も出している方だよ! とか言う気にもならねえわ!!


「……探すのに時間がかかっていたのはどうして?」


 ありがとう、スノウさん!! 私の代わりに諸悪の根源に尋ねてくれてっ!! 申し訳ないけれど、素直に本当だ! と喜んでいるシャインさんには期待は出来ない! それはそれで可愛いけどねッ!


「認識阻害の魔法がかかっているんだぽよ。君たちがそんな格好で街中を歩いていても何も言われないのと同じぽよね」


「なるほど……、だから見つけるのに手間取ったということね」


「そうだぽよ」


「あのぉ」


「どうしたぽよ?」


 聞いても無駄かもしれないけど、今の説明に若干気になることがある。スノウさんが最初に言ってくれたあとだから私が続いても二人に怪しまれることはないだろう。


「認識阻害がかかっているここをどうやって見つけ出した、んですか?」


「あっ! 本当だね! やり方とかあるの? アタシ達でも出来るのかなぁ」


 やはりシャインさんはとても優しくて、それでいて責任感がある人だ。

 私なんかやり方聞いたらどんどんウサギ野郎にさせる気だったというのに、自分たちでも出来ないかなんて言うなんて。


「Gaagleで検索、じゃなかったちょっと特殊な魔法だから三人には無理だぽよ」


「そっかぁ……」


「特殊な魔法……、ちょっと興味があるわね」


 絶対嘘だぁあああ!!

 検索って言ったじゃん! こいつ今、最初に超メジャーな検索サイトの名前言いやがったじゃん! 認識阻害とかもこうなったら怪しさしかねえよ! 普通に検索かけたら出るんじゃねえか! サボってただけじゃん! サボってただけじゃん!!


「さぁ、三人とも覚悟は良いかぽよ!」


「もっちろん!」


「ええ」


「……はい」


 ということはなんだ? 他の支店、じゃないアジト……、もう支店で良いや。支店だって普通に検索かけたら見つかるんじゃねえのか? というよりもそもそも会社のホームページくらい創られている勢いだろ、もうこれ。


「どうやっていくの? やっぱり突撃?」


「安心するぽよ! ちゃんと作戦は練ってきているぽよ!」


 そう言って、ウサギ野郎は会社のなかへ……、うん? あいつが、会社のなかへ? あの終わったあとにしかやってこない卑怯野郎が先頭で?


「チ、チーカマ! 危ないよ!」


「まったく……、ほら、二人ともいくわよ!」


 ウサギ野郎の行動に二人も驚いているみたいだ。それはそうだろう。

 一応、あいつは戦えないことになっているんだから。まぁ、本当はめっちゃ肉体派なんだけど。というか、このまま相手に八つ裂きにされたほうが良いとすら思えるんだけど。


 慌ててウサギ野郎を追いかけた私たち三人が目にしたのは。


「18時に面会の約束をしていたチーカマと申しますぽよ」


「チーカマ様ですね。……はい、ようこそお越しくださいました。お手数ですがこちらにお名前を記入頂けますでしょうか」


 受付窓口のお姉さんと普通に会社チックなやり取りをしていたウサギ野郎の姿であった。


 どうせこんなことだろうとは思っていたけどね!!

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