因縁! 星雲大帝と優月!

 優月の父親は宇宙海賊だった。


 だが、星雲大帝の襲撃に遭って、共倒れになる。

 その際に、海賊のアジトは崩壊、父親と離ればなれになってしまう。


 父親の手がかりを追って、優月は地球へやってきた。

 その世話をしてくれたのが鏡華だ。


 だが、父親の消息は未だに分からない。

 死んだかもしれないし、まだ生きている可能性もある。


 その鍵は欠片が持っている。

 手稿がそれかどうかは分からないが。


「そんな、父さんは、死んだの? アンタが直接、父さんを殺したの?」

 優月が膝から崩れ落ちる。


『さあ、ずいぶん昔のことだから、ハッキリとは分からないけど』


 カルキノスは、いやらしい笑い方をして大げさに肩をすくめた。


「優月、大丈夫か?」

 オレが呼びかけても優月は答えない。


 優月の指先に、武器が触れる。

 その瞬間、優月が顔を上げた。瞳に殺意が映る。


「まあいいわ。アンタを倒せば全部分かる。手稿も手に入る」

 優月が、ムーンダンサーでハサミ状の腕を押し出した。

 剣を銃モードにして闘志を燃やす。


「アンタ、生きて地球から逃げられると思わない事ね!」


 ムーンダンサーが火を噴く。光の弾丸をばらまき、優月は円を描くように移動する。


『馬鹿みたいに銃を乱射しても、アタシ様は殺せないわよん!』


 カルキノスには効いていない。どうも、磁場フィールドを展開しているようだ。


『いくらやっても無駄よ女海賊。このアタシ様にダメージは与えられないわ』


「そうかしら?」

 光の弾幕が激しくなる。


 優月が、カルキノスの死角へ。


 ムーンダンサーが、杖の形に変形した。


「くたばりなさい!」


 サスマタ状になったムーンダンサーで、カルキノスの顎を打ち上げる。


「何ですって!?」

 だが、カルキノスを打ち砕くことはできなかった。


 見えない障壁は、打撃すら弾くするのか。


「どけ、優月!」

 ハンガーをブーメラン代わりにして、投げ飛ばす。




 ハンガー型の流星刀が、緋刀の繰り出すワイヤーを弾く。


 オレの攻撃と同時に、優月はその場を離れる。


「どういう原理よ!?」

「緋刀のワイヤーが、障壁を作ってる!」



 ワイヤーに特殊な磁場を流し込んで、防御フィールドを発生させているんだ。





『ギャハハ! この特殊なフィールドは、物理攻撃も受け流すわ! あんたのへなちょこ攻撃なんて目じゃないんだから!』


「だったらオレが行くぜ!」



 優月が攻撃している間に、オレは跳躍していた。急転直下で刀を振り下ろす。


 だが、これも受け付けない。緋刀の作り出す障壁に、はじき飛ばされる。


 二本の黒い刀を持ってしても、傷一つ付けられない。


「なんて野郎だ。二メートルのコンクリも切り裂く最強の金属だってのに」


『そういう問題じゃないの。アンタたちとはオツムの出来が違うんだから!』


 両手をペンチ状のマニピュレータに戻し、優月とオレの首を掴む。高笑いしながら、ジェット噴射で空高く舞い上がる。


『どう? 絶景でしょう。これがアンタたちが最後に見る地球よん』


 カルキノスの腹が開く。


 そこには、ココナッツ大の隕石がスッポリと収まっていた。ヴォイニッチ手稿だ。


『この手稿から出ている障壁がある限り、アタシ様に傷一つできないわよん。惑星破壊砲台でもない限りね! ギャハハ!』


 暗かった空が更に暗さを増す。月を覆い隠すほどの雲……いや、巨大な船が、地球へと降下してきた。


「あれは、銀河警察の船じぇねえか!」


「なんでアンタが制御できるのよ!」


 おそらく、欠片の力だ。


『ワイヤーを使って電気信号を送り込んで、火器管制を乗っ取ったのよん。これが銀河警察の最終兵器、惑星破壊砲台よん』

 ゲラゲラとカルキノスが笑う。いつ聞いても不快だ。


 船の内部から、船団の怒号が飛び交う。外からでも聞こえてくるくらいである。


 計器類の自由がきかない、レバーが動かない、脱出装置の稼働どころか、外に出られないらしい。


『頑張ったアンタたちに敬意を表して、惑星ごと吹き飛ばしてあげるわ。ギャハハハ!』


 船の先端が開き、穴が顔を覗かせた。


 あれが、惑星破壊砲台か。

 星雲大帝を跡形もなく消滅させる為に使われるはずだった兵器。

 銀河警察の切り札が、今まさに地球へ向けられようとしている。


「確か、手稿の力が、船を操っているんだよな? お前、そう言ったよな?」


『そうよ。さっき説明したでしょ?』


 オレは、船の行動を見て、フッと笑う。



『何がおかしいの? 恐怖で頭がおかしくなったのかしら?』


 なるほど。手稿の力で船を制御しているのか。



「いやだっておかしいだろ普通。なあ、優月?」

「ええそうね、クスクスクス」


 オレと優月は、おかしくなって笑った。



『そりゃあおかしいでしょうね。こんなに清々しく死ぬんだもの』


 惑星破壊光線の砲塔に光が収束されていく。


 まだわかってないのか。


 仕方ない教えてやろう。今何が起こっているのか。


「カルキノス、ちょっといいか?」


『何よ』







「後ろを見てみな」


『はあ? 後ろに何がある……って!?』


 カルキノスが振り向く。



 そこには、カルキノスに向けて照準を合わせた砲台が、エネルギーをチャージ完了していた。


 地球とは水平になっている。




 つまり、地球ではなく、カルキノスをピンポイントで狙っている。

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