宇宙忍者の任務は、爆乳宇宙海賊とのデート!?
椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞
第一章 ニンジャ、宇宙女海賊と逢い引き
デカイ! 爆乳女海賊と遭遇!
日本が夏休みの中盤を迎えていた頃、オレはシチリア島にいた。
海岸に謎の遺跡が見つかったからだ。人工物とも自然洞窟とも言えない、奇妙な形状の洞窟だ。専門家によると、何かメッセージ性があるのでは、という話だが、忍者のオレにはどうでもいい。要は、そこにある【オーパーツの欠片】が目的だ。
「ああ、くそ」
デバイスウェアのジッパーを開けて、胸から空気を取り込む。夏場に完全装備のライダースーツ型デバイスウェアは熱すぎる。
「……っ!」
休みがてら、崖の上を見上げると、お目当ての少女が立っていた。
切り立った崖の上に、女海賊が立つ。ふんわりとした赤毛を太めにツインテールで結び、宝石を思わせる青い瞳が印象的だ。出るところは出ているが、全体の線が細い。女と言うより少女という方がふさわしいだろう。歳はオレと同じくらいかもしれない。
少女は、真紅のデバイスウェアに身を包んでいた。オレと同じライダースーツで、真紅のマフラーが幻想的だ。顔全体を覆うハート形のバイザーに隠れて、顔がよく見えない。小柄だが発育がよくグラマーだ。胸のサイズも奇跡や神秘を思わせる。生きた美術品だと言われたら信じてしまうかもしれない。
アレがオレたち忍者の敵、宇宙海賊だ。
欠片を集め、世界中を荒らし回る賞金稼ぎ共である。
少女が小脇に抱えるのは、USBに似た細長い記録媒体だ。しかし、中身はこの世界とは違う技術で作られている。世界のあちこちに散らばった遺産、【オーパーツの欠片】と呼ばれているものだ。
声を上げそうになるのを抑え、オレは呼吸を整える。ヘルメットをかぶり、耳部分に仕込んである無線機のスイッチを入れた。
『こちら
無線機で別働隊に連絡。海賊に気づかれないよう、そっとささやく。
『
ヘルメットから、部隊長が指示を送ってくる。
あんな可憐なナリをしているが、オレ達は洞窟の調査中にあの海賊と出くわし、パーティがほぼ半壊したのだ。死人こそ出ていないが、欠片は彼女の手にある。
『深追いは避けろよ、虎徹』
「心得ているよ、隊長。了解だ」と、オレはスーツのジッパーを上げた。
『ユーニス様、これは何でしょう? 何かの鍵のようですが』
海賊の周りを、コウモリの羽が生えた銀色の玉子がフヨフヨ飛び回る。アレは【
「ユーニス・ブキャナンかよ。どうりで……」
ここ最近、世界中を震撼させている女海賊の名だ。
ユーニス・ブキャナン、お初にお目に掛かるぜ。
オレ達忍者が束になっても敵うかどうか分からないと言われている。
「そうね。きっとあたしが探している物に違いないわ」
海賊が身を翻す。ここから脱出するつもりだ。
逃がすか。欠片の入手がオレ達の使命だ。
一瞬で、ユーニスの前に出る。
「てめえが噂の女海賊か!」
ユーニスに向かって叫ぶ。
こちらに少女が気づいた。再び顔全体をハート形のバイザーで覆う。
『ユーニス様、脱出を!』
パルの声に、ユーニスと呼ばれた少女が反応した。「ロンメル」とパルの名を呼ぶ。
小型端末が三日月型の武器に変形した。半円のフラフープを連想させる武器が、少女の腕に収まる。先端から棒状の持ち手が伸びており、反対側の先端と繋がっている。
武器から光の弾が発射された。
オレは岩陰に身を隠し、壁の向こうを覗き込んだ。
瞬時、針のような形のレーザーが三日月型の先端から乱射された。女が鍾乳洞を抜ける。
三日月型のマシンガンが、浮遊端末へと形を戻す。
「野郎!」
狭い洞窟を駆け抜け、敵の背中を捕らえた。
体を装甲付きのボディスーツで纏ったユーニスが、岩の道をノシノシと駆け抜けている。
『ユーニス様、忍者がまだ追ってきます!』
浮遊端末が、オレの姿をとらえた。
「逃がすかよ!」
オレは、スマホを懐から取り出す。電源を入れて、画面を手の平で擦った。
画面をスライドさせる度に、カード型の平たい光がユーニスへ向かう。忍者秘伝の、光学式手裏剣だ。
後ろに目でも付いているのか、ユーニスは手裏剣を見もしないで買わし続ける。
ユーニスがデータチップを浮遊端末に預けた。オレに向けて石ころ大の物資を投げつける。小石が岩壁に貼り付く。オレをセンサーで察知して、爆発する。小型爆弾か。
爆発で岩が砕け、砂塵が舞う。
壁を走り、オレは爆風をさける。
「ロンメル、戦闘モード」
少女が端末に指示を送る。
続いて、ユーニスの三日月型マシンガンが、粒子弾を打ち込んできた。いつの間に端末を武器へ変えたのか。それすら分からないくらいの速度だった。
オレは小太刀を逆手に持って盾代わりに。反対の手で長刀を順手に携え、粒子弾を弾く。
前を行く女海賊はこちらに視線を向けていない。が、正確な射撃をしてくる。
こっちは壁走りしているままだというのに。
「くそ! こいつ、後ろに目があるのかよ!?」
一人乗りサイズのポッドが海に浮いている。真っ白いソラマメみたいな形のバカでかい脱出艇が。
海賊が、ポッドに飛び乗った。身に付けている装甲を解く。赤いビキニ姿となった少女が素顔を見せる。青い瞳がこちらをじっと見た。額から汗が流れ、少女の白い肌を撫でる。
『ユーニス様、早く脱出を』と、浮遊端末が急かす。
もうすぐ、ハッチが閉まりそうだ。
「逃がすかよ。ぬおっ」
ポッドが飛び出すと同時に、オレも飛びつく。
勢い余って、身体ごと乗り上げてしまった。どうにかバランスを取って、海への落下を防げたが。バランスが取れず、前につんのめってしまう。
『虎徹、その女は危険だ。ポッドから離れろ!』と、隊長の通信が耳をつんざく。
隊長の声で、一瞬だけ吹っ飛んでいた意識が戻ってきた。
「離しなさいよ!」
「うるっせえ! てめえが欠片を渡せば済むんだよ!」
手四つの状態になって、海賊をシート側に追い詰める。
「……? なんだありゃ?」
シートの後ろに、光る物が。それは、俺がよく知っている物だった。
オレは海賊ユーニスと戦闘中だったことも忘れ、シートに取り付けられていた物を拾う。
「ちょっと何すんのよ!」
ユーニスの抗議も聞かず。オレは起き上がって、拾った物を海へ投げ捨てた。
『爆弾です! ユーニス様伏せて!』
反射的に、オレはユーニスを抱いて庇う。
海から、水柱が高く上がった。
塩味の雨が、オレの背中に降り注ぐ。
水しぶきを浴びて、ユーニスも顔をしかめた。
やっぱり、あれは爆弾だったらしい。しかも、とんでもない威力だ。バッチリ致死量じゃねえか。
「危なかったな。無事か?」
『お陰様で。どうやら、何者かが我々を排除しようとしていたようです。欠片を手に入れた直後に』
「ええ、そうみたいね、って……!?」
それにしても、どうも右手に程良く柔らかい感触がする。
まだ爆弾があったか? それとも、新型のエアクッションか? それにしては柔らかすぎるような。それに手が温かい。
「な……」と、ユーニスが息を呑んだのがわかる。
「わ、やべ」
そこでようやく、オレは何を掴んでいたのかが分かった。
人肌だ。
胸部装甲だと思っていたのは、思っていたより薄手だったのである。
そのせいで、オレはユーニスのバストにダイレクトアタックを仕掛けてしまったようだ。赤い水着越しからでも、肌の質感がわかってしまう。
ユーニスの顔が、みるみるマグマと化す。
敵の肌だというのに、オレは緊張と照れで、身動きが取れなくなっていた。
まずいまずい! オレまで気が動転してどうするんだ?
『おやあ、これは何とも、お約束の展開で』
パルだけが、唯一冷静に状況を分析していた。
「ややっ! これはだなぁ!」
「いやああああ!」
オレの弁解も聞かず、ユーニスはオレを海へと蹴落とした。
浮き上がり、口に入った海水を吐き捨てる。
「あんた、次に会ったら絶対殺すからぁ! うわあああん!」
捨て台詞を残して、ユーニスを乗せたポッドが視界から離れていく。
「ちくしょう、逃げられたか」
「大丈夫か?」
持ち直した仲間が、クルーザーで助けに来てくれた。海からオレを引き上げる。
「ああ。でも、逃げられた。欠片も奪われてしまった」
視界から遠ざかるポッドを、オレは苦々しく見つめる。
「それだが、お前にオーパーツの欠片の奪還指令が出た。あのポッドの追跡を頼みたい」
「ああ。わかった。どこまで行けばいい?」
「座標を調べて行き先が判明したんだが、行き先というのが、日本なんだ」
オレは、ため息をつく。日本か、数日ぶりだな。
「
「了解。ジイサマの下で働くのはいい気がしないがな」
「そう言うな。あれでも心配して下さっているのだ。じゃあ、頼んだぞ、虎徹」
ああ、やっとジイサマの説教から解放されたと思ったのに。
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