スターチス

ちとせ 蓮

1. プロローグ


 君がいなくなって5年。



 「まさとにーちゃん、これちょーーだい!」



 君が大好きなお菓子。君が大好きな子供たち。



 「はい、50円ね」



 今、幸せに過ごしていますか?

 俺が教えたこと、間違ってなかったよな?


 8年前のあの日。

 もし君と俺が出会っていなかったら、君はどうなってたんだろう?


 


 俺の中で、君の存在って大きすぎて。


 望んでいたことなのに、悲しくなるんだ。



 君も同じだって勝手に自惚うぬぼれてた、そんな都合のいい脳みそ。国語の教師にでもなればよかったのかな。




 「まさとにーちゃん、結婚しないのー?」


 「ははっ、相手がいないよ」


 「なんかアイドルみたーい」



 今の子はおませだよな。君がかわいがってたあんなに小さかった子の口から、たくさん女の子の名前が出てくるようになったよ。


 一方の俺は何も成長していないけどね。



 君が幸せならそれでいい。こんなの強がりだ。


 

 いつしか、君の幸せの源が自分だったらって。本当情けないよな。



 君に生きる希望を与えるのが俺の役儀で、それ以上でもそれ以下でもない。


 君が出ていくといった時、この目的は完全に果たされたんだ。



 俺、ちゃんと笑えてたよな?
















 

 ううん、やっぱり。












 君は今ちゃんと笑えてる?






 それなら、いいんだ。

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