あの瞬間、きみは

須川  庚

プロローグ

 高校二年生の二月。

 もう三年生への準備が始まっていた。

 受験生になるという意識は皆無で、まだ半年以上先の話だと思っていた。


 わたしの名前は弓崎ゆきさき菜々なな

 ただごく普通の高校二年生だ。

 学校生活にも満足していた。

 これからの楽しみは三月の先輩の卒業式。

 そして四泊五日で沖縄へ行く修学旅行だった。

 まだこのときには気づかなかった。

 この当たり前な学校生活が崩れ落ちるとは――。

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