VSドラゴン

 先手はドラゴン。炎のブレスをいきなり吐いてきやがった! だがローズがマジックアイテム『インスタントバリア』を素早く発動。これはある程度の攻撃なら少しの間防いでくれる結界魔法のようなものだ。滅茶苦茶高いのに使い捨てだから人気は無い。

 だがそのおかげでいきなりの全滅は避けられた。ナイス、ローズ!


「じゃあ次はこっちだな!」


 ドラゴンに迫るリアンを背負った俺とローズ。そこにブレスの予兆。また吐くのか!


「もう一回使――」

「いえ、任せて!」


 そう言うとローズは一瞬で俺から離れ、マジックアイテム『ボム』をドラゴンに投げ注意をひきつけた。要は爆弾だ。威力はそこそこだがドラゴン相手となるとイラつかせる程度だろう。だがそれで十分だ。ドラゴンはローズの方に集中し、まさにブレスを吐こうとしている!


「させません! ロックブースト!」


 ドラゴンの口に岩が飛んでいく。ブレスを吐こうと口を開けた瞬間そこに入っていきブレスは失敗。更に内部で何らかのダメージを負ったようだ。


「ギャアア!」


 吠えたかと思えば尻尾をぶん回し、更に踏みつけてきやがった。


「危ない危ない! っと。体登らせてもらうぜ!」


 せっかく向こうから近づいてきてくれたのだからこれを逃すわけはない! 登りつつ攻撃しつつ、ドラゴンの顔に近づいていく。


「おおっと! 暴れるんじゃない!」

「それは無茶な話かと!」


 軽口を交わしながら一歩また一歩と近づいていく! そして肩に到着。ここでドラゴンと目が合った。そして開かれる口。見える牙。まさか、喰おうと、


「ま、そうはさせないんだがな」


 マジックアイテム『フラッシュボール』を発動。要は閃光で目潰すだけのアイテムだ。人間相手にはバレバレなので無駄になることが多いが、知性のない獣やモンスターには有効だ。


「ゴオオオ!?」

「数秒は目が機能しないだろう、つまり」

「あなたは終わりです! タイダルウェイブ!」


 目を閉じながら自分の肩目掛けて噛み付いてくるドラゴンの攻撃を躱しながらリアンのとっておきを発動。発動場所は――


「ゴアアアア!」

「体内で魔法が発動ってエグいな……」

「でもそれは私の魔法の痕跡が体内に無いと無理なので、こんな大型のモンスターじゃないとそうそう出来ないですよ!」


 かなり苦しそうなドラゴンだが戦意はまだ消えてない……。大したものだ。


「流石は最強種族。楽にしてやるよ」


 敵は体内で発動した魔法に気が取られていて隙だらけ……いや、視力が戻ったようだ。瞳を開けて俺の方を見ている。体内の状況を無視して攻撃する気か……!


「誰か忘れていないかしら」


 ドラゴンの眼に突き刺さるナイフ。これで二度と俺の姿を捉えることは出来まい!


「ナイスアシスト、ローズ! はああぁぁ……!」


 溜める。溜める。全てのマナを溜める。今までは一瞬で出来ていた事が今は出来ない。だが、それで良い。時間がかかるのならば誰かに時間を稼いでもらえばいい。全て一人で背負う必要はない。ある意味で今の俺は以前の俺よりも強いのかもしれないな。


「またせたな……久しぶりの、オーラバースト!」

「ギャアアア!」


 ドラゴンの顔面に叩き込んだ俺の唯一の技。以前イーナに使った時と比べると、出力をかなり増やしたため威力も段違いだ。


 とはいえ体内のマナをアレだけ使っておいてこの程度の威力だが……コイツを屠るにはこれで十分だった。すぐにマジックアイテム『マナポーション』で回復する。味は最悪だが体内のマナを回復出来るのはこれぐらいだから我慢して飲むしか無い。


「まっず……」

「お疲れ様でした!」

「ナイス一撃だったわ」


 全員でハイタッチをする。ん? 手が一本多かったような。


「いや~おめでとう! 凄いねまさかドラゴンを倒せるとは思わなかったよ!」


 気がついたらさっきのエルフの青年が姿を現していた。いつの間に……。だがちょうど良いな。聞きたいことは山ほどあるのだから。


「おい、質問してもいいか」

「どうぞ~」

「この試練とやらを乗り越えたら報酬があると聞いているんだが」

「ああ! 私達エルフがこんな姿となってもマナを蓄えに蓄えてきたのだから、大概の願いは叶うよ」

「……俺の呪いもか?」


 俺がそう質問するとさっきまでの陽気な感じは鳴りを潜めシリアスな表情へと変わった。


「……ごめん。それはやってみなければわからないな。呪いのレベルが高すぎる」

「そうか……なら頑張る意味はあるな」


 このエルフの見立てで完全に無理だと言わないのなら、やってみる価値はあるってことだ!


「……へぇ。さっきの返答で奮い立つんだね?」

「可能性が一%でもあるからな」

「僕が思っていた勇者様とはちょっと違うようだ」


 色々あったからな……おっとまだ聞きたいことがあるんだった。


「何でここの空間にあんな強いモンスターがいるんだ? あれを管理できているってことはお前らかなり強いんじゃないか」

「ははは! この空間は我らエルフの幽霊が作り上げた空間だからね! つまり我らエルフにとって都合のいい空間って言うわけさ。だから好きなようにモンスターの力を弄れるし、ここでは僕ら確かに最強かもね」


 そうか、ちょっと安心。こんな奴らが外の世界にもいるかも知れないのだとしたら結構手に負えないからな……。


「質問はそんな所かい? じゃ、あと一戦頑張ってね~」


 脳天気な言葉を残し青年は姿を消した。消える際にやはりリアンの方をチラッと見ながら。だが当のリアンは気がついていないようだった。

 ま、別に良いか。あいつの言う通りラスト一戦、気合い入れていくか!

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