07.そう来ると思った
まさか聞かれるなんて思ってなかったから、負ける可能性が高い勝負なんて言ってしまったけど、果たしてよかったんだろうか。
いや、今はそれよりも、この場でどう答えるか、だよな。
負ける可能性が高いと判っていたからあえて勝負をしなかった、なんて思われたくない。赤城さんはモノじゃないから賭けの商品のような扱いをしたくないと言ったのは逃げじゃなくて本心だ。
でも今ここで、それを説明するのって、ますます言い訳っぽいよなぁ。
「……うん」
とりあえず嘘は嫌だしごまかしきれないだろうから、うなずいておく。
「じゃあさっきのは、勝負したら負けるから、あえて戦いを避ける方向性ってこと?」
この話の流れだと、そう来るよね。けど、咄嗟にいい言葉が浮かばない。
「違うよ」
そうとしか言えない。
向かいの女の子達に、じぃっと見つめられてビビる。心臓が破裂しそうだよ。
「ねぇ、もういいじゃない。あの時の新庄さんはかっこよかったからそれで。どっちみち、新庄さんがサユちゃんを好きだってことは確定なんだよね。だったらサユちゃんの返事の方が重要じゃない?」
神奈ちゃんが助け舟を出してくれた、と一瞬思ったんだけど、それって今ここで赤城さんの返事を促してるんだよな? 全然助けじゃねぇ。
当然、赤城さんは目を丸くして、僕と神奈ちゃんを交互に見た。突然そんな話の展開になるなんてのは彼女にとっても予想外だったみたいだ。
「へ、返事も何も……」
赤城さんは口ごもって、もじもじしている。
わぁ、なんか新鮮、こんな赤城さん。いつもさっそうとしていて、はつらつとしていて、何かに困って口ごもる姿なんて想像もできなかった。
困ってる赤城さんもかわいいな。
なるほど、これがギャップ萌えってヤツか。
「いやぁ、それよりも俺、さっきのキラキラの白い光の方が断然気になるんだけど。あれ何?」
松本が話をさらに捻じ曲げた。これこそ本当の助け舟だっ。
「あー、あれね。闘気って言うんだよ。初めて見た?」
「闘気? なにそれ。初めて見るどころか実際にあるなんて初耳だよ」
この後、闘気や極めし者の話で松本と神奈ちゃんが盛り上がって、その間、赤城さんと僕はなんとなく気まずいような雰囲気で二人の話を聞くだけだった。
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