僕のカノジョはエージェント
御剣ひかる
本編 僕のカノジョはエージェント
彼女がカノジョになるまで
01.こんな始まり方
同じゼミの子が気になって仕方がない。
人の顔色ばっかり気になって、好きな人ができても告白どころかフツーに会話することも難しい僕だけど。
それが、絶対かなわない
彼女もゼミの中では目立たない方だけど、なにげに頭がよくて物知りみたいだ。僕の一番の、いや唯一のっていうべきかな、とにかく僕の友達が難しい課題とか出た時に彼女を頼りにしてるって言ってた。
特別美人ってわけじゃないけど僕好みの可愛い雰囲気の顔立ちで、流行とかブランドとかに疎い僕でも、彼女は結構おしゃれだって判る。
一方の僕はって言うと、落ちこぼれているってとこまではいかないけど、そんなに成績もよくなくて、顔もぱっとしないし背もそんなに高くない。百七十あるかないかぐらいだ。彼女と五センチぐらいしか変わらないんじゃないかな。
何より、あんまり人と話すの得意じゃないから話しかけることすらむずかしい。
気になる人相手なんかになったらもう、マジで心臓飛び出るんじゃないかな。
だから、ひっそりと彼女のことを想ってる。
それだけで、彼女とお付き合いなんて絶対にないはずだったのに。
繁華街にあるイタリアンレストランの厨房のバイトが終わった後だから、きっと二十三時とかそれぐらいだったと思う。疲れた体を引きずるようにしてアパートに戻る途中だった。
バイト先の駐輪場からバイクを引っ張り出して来てまたがってエンジンかけながら、あぁ、そう言えばレポート今週中だったかな、なんて考えてたら、暗闇から何か塊が爆走して来た。すごい勢いだったから僕は「うわぁ」と情けない声を出した。
「しっ、お願い声出さないで……、って、新庄くん?」
え? この黒塊一号は僕の知り合いか?
と、よく目を凝らして見たら。
駐輪場の外灯にほんのりと照らされた顔は、僕の気になる“彼女”――
これってなんて偶然。これって恋の進展の予感?
なんて一人でちょっと、いや、かなり期待した。我ながら結構ずうずうしかったかも。
この後きっと、彼女を追っかけて男が来るんだぞ。きっと彼女に気があるヤツがしつこく付きまとってくるから赤城さん逃げてきたんだ。よし、漫画でよくあるみたいに、僕の彼女に何か? なんてさらっと言って追い払ってやろうか。
人見知り激しい僕だけどこういう妄想は得意だったりする。
考えついても実行できるかどうかは別だけど。
「おい、どっちだ?」
「そっちの方に逃げたぞ」
……げ? なんで男が何人もいるんだ?
それもなんかすごい怖い雰囲気なんですけど。
こんな始まり方ってある? ってか、僕終わってる?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます