第48話 イベント その1


 ピピッ……ピピッ……


 「おっ!きたきたー」


 現在、19時55分。タイマーを止めて最後にトイレへ向かう……

 1回ログアウトしたらイベント終了らしいからね……って言ってもさっきからずっとそわそわしてて、ストレッチしたり、ベッドサイドに水を用意したり着々と準備は進めてたんだけどねー。


 「よし、これで準備おっけー」

 

 早速ログイン……うん、見慣れた光景だ。


 「あれ、そういえばイベントってどうやって参加するんだろ?」


ピコン!

 〈まもなくイベントを開催いたします。イベントに参加しますか? YES or NO〉


 「おおー、もちろん!」


 YESを選択すると辺りが光り始めた。まるで転移するみたいに……


 「って、やっぱ転移してたんかーい!」


 あ、ちょっとテンションがおかしいのは初めてのイベントにわくわくしてるせいだからあんまり気にしないでほしい。


 周囲を見回すとどこかの遺跡みたいな雰囲気……あっ!もしかしてマシンナリーさん達の街なのかもっ!


 「ん?でもマシンナリーっぽいひといないよね……ガラーンとしてるし」


 うーん……街だけそっくりなのかな?パッと見、建物にひと気ないみたいだし。ま、いっかー。


 空に光の玉が現れた!ま、眩しい……うん、太陽くらいの大きさだねー。ふむふむ、どうやらあれはイベント時にはおなじみの運営さんの姿らしい……神様っぽさを演出してるのかな?


 『みなさん、イベントへようこそ!簡単にルール説明するのでよく聞いてくださいねー』


 おぉー、しっかり聞かなくちゃ!


 『はーい!ルールは簡単、クリスタルやコアを集めるだけです!もちろんモンスターを倒してドロップする場合もあれば、どこかに隠されていることもあります。クリスタルは1ポイント、コアは3ポイントとして集計します。ポイント上位のプレイヤーには報酬もあるので頑張って集めてくださいねー!死に戻ったら最初のスタート地点に戻りますが、ペナルティはありません!とっても親切ですよねー?あとは他人からクリスタルを奪おうとすると失格とみなされフィールドから追い出されるので気をつけてくださいねー!悪質と判断した場合は罰則もあり得ますので……ただし、譲られた場合は別ですよー。モンスターを倒すもよし、釣りをするでもよし、どこから出てくるかわからないので気楽に楽しんでくださいねー。 カウントダウンでスタートですよー!』


 「よしっ!俺、モンスター倒しまくるわ!」

 「オレは釣りかなー?運営がああ言うってことは釣りでもゲットできるってことだろ?」

 「わたしは穴を掘ってみるニャ……そして温泉を掘り当てるニャ」

 「それ趣旨違くない?」

 「いいニャ!楽しみ方は人それぞれニャ!」

 「温泉出たら連絡してねー」

 「頑張るニャ」


 周囲ではそんなことを言っているプレイヤーが多数……おおー、こんなにプレイヤーがたくさんいるなんて初めてだなー。初期装備の人はいないけど……今まで出会わなかったのが不思議なくらいだよー。なかには知り合いと即興でパーティ組んだりもしてるみたい。



 でも、ベルやシュウたちは見あたらない……周囲の話を聞いているといくつかの場所に転移されるのが当たり前みたいだからそのうち会えるかな?ま、いっか!頑張ってクリスタル集めなくっちゃ!


 『あっ!そうでした!このフィールドにはNPCはいないので家の中も勝手に入って大丈夫ですよー!回収できるものもあるかもしれませんし……不法侵入にはならないのでご安心を!でも拠点やリスポーン地点にはできないので気をつけてくださいねー』


 へー、そうなんだー……てことはやっぱりイベント用のフィールドってことかなー?クリスタル以外のものを見つけたらもらっていいってことだよね。


 光の中心に数字が出現し、10……9……8……7……とカウントダウンが始まり、数字が減るたび周囲の熱気が高まっていく……3、2、1……スタート!


 スタートするとほとんどのプレイヤーは方々に走り出した。

 きっとモンスターを探しに行ったんだろうな……ん?わたし?わたしは光の玉が花火みたいに弾けたのに見とれてたよ……きれいだった。


 「んー……戦闘力ないし、地道に人が探さないところ行ってみよーっと……」


 早速、近くにあった大きな建物へ入ってみる。大きな両開きの扉を開けると……


 「おおー、ここは……図書館っぽいなー」


 たくさんの本がズラーっと並んでいるので多分間違いないはず……本を手に取ってみようとしたらスカッと空振りしてしまった。


 「あれ?取れないじゃん!ただの絵と一緒ってこと?」


 えー、こんなに沢山あるのにひとつも手に取れないなんてことある?

 本棚を鑑定してみても何も出ない……うーん。せっかく入ったんだからひとつくらい本を読んでみたい……


 「あれ?なんか目的変わってるような……はっ!クリスタル探すんだった!」


 背表紙付近を指でなぞるように移動……うん、こうしてたら触れられるのが見つかるかなーって思って。


 「あっ!これ、触れる!」


 いそいそと本を引っ張り出して表紙を見てみた……よ、読めない……


 「読めないなんて、残念……スキルが必要なのかも」


 とりあえずペラペラめくってみたら本の中央付近からコロッと何かが転がり落ちた。


 「うわっ!あ!これって……クリスタルじゃない?」


 早速、鑑定してみると……


*****


 名称:叡智のクリスタル

 説明:コアに差し込むことができるクリスタル。


*****


 「叡智のクリスタルかー……」

 

 探したいのは至誠のクリスタルだけどこれも必要になるかもしれないし、ラッキーだね。


 「アイテムボックスに入れておこう……この本ももらっていいのかな?いいよね?」


 読めないけど一応アイテムボックスに収納……ほ、ほらいつか読めるかもしれないしっ!


 その後、図書館中をぐるぐるして至誠のクリスタルを2つ、叡智のクリスタルを1つ見つけることができた!そのうち2つは壁の絵画に埋まっていたり、花瓶の中に入っていた。残りはさっきと同じように本から出てきた。花瓶と本はゲットしておく……絵画は取り外せなかったので断念。


 「ここはこれくらいかなー……ん?あのランプだけ色違わない?」


 図書館の中央にあるランプだけ他よりほんの少し白っぽい……よくよく見なければ気づかないくらいの差だけど、気づいてしまえば気になるというもの……


 壁際にある高いところの本を取る用?の脚立を使ってランプに近づいて鑑定すると……


*****


 名称:生命のコア

 説明:クリスタルを差し込むことができるコア。


*****


 「おおー!これ重要なやつじゃん!回収しなくてはっ!」


 慎重に取り外し、アイテムボックスへ……


 「ふぅ……なんか幸先いいなー」


 って油断してたら足踏み外して、死に戻りましたよね……


 「はぁー……やっちまったー……」


 スタート地点に戻ったけど……まぁ、そんなに移動もしてないし、ペナルティもないから問題ないっちゃないよねー!


 「よし、次行ってみよー!」


 現在の収穫……

 【至誠のクリスタル】×2

 【叡智のクリスタル】×2

 【生命のコア】×1

 【読めない本】×2

 【花瓶】×1

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