第37話 材料を手に入れよう その2
結果的に言うとエルダートレントはドロップ品を残し消えた。あ、ちなみにNPCがモンスターを倒した時はドロップ品はその場に残る仕様みたいだよ……でも拾わずに長時間放置すると消えて無くなっちゃうらしい。
……ただ倒すだけなら弓とかで火をつけてやれば、よわよわなわたしでも倒せる可能性がある(可能性であって倒せるとは言ってない)ってルミエルさんは言っていたんだけど今回はそれをするとドロップ品の品質に影響があるってことでそれはできなかった。
事の顛末はこうだ。
まず、わたしがエルダートレントから一撃を食らって案山子さんに守られているとルミエルさんがどこからか(多分、マジックバッグね)弓を取り出したのを見て……やっぱりエルフって弓使うんだーって呑気に思ってたらそれも魔道具化してあるらしく威力が段違いだったよ。
うん、ビュンッ!って音とともに一直線に飛んで行った矢……ルミエルさんのその一発でエルダートレントの大きな枝がいくつか吹っ飛んでた……そしてその隙に素早く動き回り着実にダメージを与えていったグランツさんとバーバラさん。
案山子さんもぐるぐるパンチを繰り出しつつ攻撃に加わってる。え?わたしを守りつつどうやって攻撃してるかって?
なんと、ぴょーんと飛んでパンチ!ぴょーんと飛んでわたしの元へって言う荒技だったよね……知らなかったけど案山子さんの跳躍力半端ないことが判明した……あの広い畑を守る方法を垣間見た気がする。
みんながエルダートレンを相手にしているあいだ、わたしは死に戻らないように必死ですよ……とか言ってほぼ案山子さんに守られてるうちにエルダートレントは倒されてたけどねっ!ただこれだけは言っておこう!瞑想のために動かないように必死だったとっ!
ピコン!
〈スキル:瞑想がレベルアップしました〉
ピコン!
〈スキル:隠密がレベルアップしました〉
わーい、わーい!レベルアップしたぞー!うんうん、必死に隠密と瞑想したおかげだね!
「なんだか、あっけなかったわね」
「うむ、そうじゃな」
「うーん……もっと弓の威力を試したかったのに!」
「ミンナ、ブジデヨカッタ」
「お疲れ様でした!ドロップ品はきちんと回収しましたから!」
こら、そこ!それしかしてないとか言わない!地味に散らばってて大変だったんだぞ!
「うむ。案山子もなかなかだったのではないか?」
「む!そうだな!改造しがいがあるというものだな!」
「そうね。案山子ちゃん、しっかりリリーちゃん守ってたし合格点よ」
「ワーイ、アリガトウ」
案山子さんは強いけど、やっぱり火には弱いみたいでモンスターによっては注意が必要なんだって……でも、その時は魔物避けをオンにすればいいらしい。あれ?案山子さんって最強じゃないですかー!
ピコン!
〈種族がレベルアップしました。ステータスポイント5ポイント獲得しました〉
「やったー!ようやく種族レベルが上がったー!」
ふむふむ……どうやら種族レベルが上がるたびにHP、MPのステータスの数値が+5、ステータスポイント5ポイントゲットできるらしい!すばらしい!
「うむ、よかったな」
「まぁ、おめでとう」
「リリー、オメデト」
「む?娘、ちなみにレベルはいくつになったのだ?」
「はい!Lv2になりました!」
「む……それはそこらの幼子と変わらないではないかっ!いくら異界の旅人だからって無理させすぎてしまったようだな」
え……幼子って……
「リリーちゃん安心なさい。ルミエルの言う幼子はリリーちゃんの思うよりずっと年上よ」
あー……寿命が違うからかー。だってエルフの間じゃ、ルミエルさんもまだまだ若輩者って言ってたし……グランツさんやバーバラさんもまだまだ若者扱いなんだもんねー。
「そ、そうなんですね。よかったです」
ピコン!
〈クエスト:ルミエル・エンドロースと共に案山子1号の材料を手に入れよう!を達成しました〉
「む、では早速帰って1号をグレードアップさせるぞ!」
「ワーイ」
帰りはルミエルさんが張り切りすぎて休憩なし……うん、わたしだけ死に戻った方が早かったんしゃないですかね……
畑についてすぐにドロップ品を渡す……その間も急かされたことは言うまでもない。
「しばし待っていろ!行くぞ1号!」
「ワカッター」
ルミエルさんが案山子さんを改造している間に畑の世話や販売所チェック……今回は群生地が見つからなかったので魔力草や体力草は出品しないことにした。ミニトマトを出品しようか悩んだけどギルドもあるしやめておく。
「できたぞ!」
「ミテミテー」
悩んでるあいだに結構な時間が経っていたみたいだ。
「うむ、だいぶ変わったの」
「そうね」
「ですねー」
案山子さんバージョン2は腕の関節部分が球体になり可動域が大幅に広がりアッパーとかフックが放てるようになったらしい。あと、手のひらを握ったり開いたりできるようになったんだって。
「今回は材料が足りなかったのでな!1号の希望しか叶えられなかったのだ!」
「案山子さんの希望が叶えられたら十分なんじゃ……」
「む?何を言っているのだ!せっかくならばいろいろ試してみたくなるだろう?」
「あ、はい……」
この辺りにはエルダートレントが少ないみたいなので材料を冒険者ギルドに依頼するらしい。
「1号よ!しっかりデータを残しておくんだぞ!」
「ウン、ワカッター」
「データの細かさによって次回の改造に変化がでるからな!改善希望もしっかりメモるんだ!いいな、娘!」
「ウン」
「え?わたしがメモするんですか?」
「当たり前だろう!いくら1号が物をつかめるようになったとはいえ文字はまだ書けんぞ」
「ウン、リリーヨロシクネ!」
「あ、わかったよ……」
なんだか日課が増えたようですね……早速メモすることはないかと案山子さんの腕をルミエルさんみたいにじっくり観察してたら……
ピコン!
〈スキル:観察力が取得可能になりました〉
あら、らっきー!
「む!やる気があるようだな!娘にはこれをやろう」
「わーい、ありがとうございます」
ルミエルさんから手渡されたのは……棍棒かな?
「1号の材料にするには中途半端に余ったからな!」
ルミエルさん的には足も作りたかったらしいけど材料不足で今回は断念したらしい……てか、案山子さん的には足はぴょんぴょんするので全く問題ないらしい。高く飛べるし、ぐるぐるできるしそれはそれで便利だから一本足がいいみたい。うん、アイデンティティーにも関わるしね。
それにしても棍棒かー……使うかなぁ?
「む?ただの棍棒ではないぞ!」
「え、そうなんですか」
早速、鑑定してみると……
*****
名称:エルダートレントの棍棒
レア度:R 品質:★6 耐久:100
説明:職人によって作られた棍棒。殴ったときに倍の威力になる。
製作者:ルミエル・エンドロース
*****
「おおー……」
「ふん!これくらいルミエル様にかかれば簡単なものだ!」
「ありがとうございます」
うん、でもわたし力無いから効果は薄いんだよね……ありがたく携帯はしますけどね!まぁ、多分アイテムボックスの肥やしになるでしょうけど……だって手に持ってたら荷物になるし……え?ロープでくくりつけろって?仕方ないのでロープをベルトがわりに腰に巻いてそこにぶら下げることにした。
結局、ドロップ品のほとんどがルミエルさんの手にわたり魔核はグランツさんたちにということに。うん、わたしは棍棒とレベルアップで十分なので!
「ふむ!また近いうちに来るからなっ!しっかりメモるんだぞっ!」
「ハーイ、ガンバルヨ!」
「あ、はい……」
「うむ、またな」
「気をつけてね」
ルミエルさんにとっての近いうちっていつなんだろうか……しっかりメモらないと怒られそうだし頑張ってメモしよーっと!
◆ ◆ ◆
名前:リリー
種族:人間
性別:女性
状態:正常
種族レベル:Lv1→ Lv2
HP:28/40(+5)→45/45(+5)
MP:40/40(+5)→45/45(+5)
STR:5(+2)
VIT:5(+5)
INT:5
AGI:5
DEX:80
LUC:777(固定)
ステータスポイント:20ポイント
職業:農家見習い Lv4
スキル:鑑定Lv2、裁縫Lv2、採取Lv2、栽培Lv2、投擲Lv3、毒耐性Lv4、麻痺耐性Lv4、気配察知Lv2、隠密Lv2→ Lv3、地図 Lv3、成長促進 Lv3、瞑想Lv1→ Lv2、水魔法Lv1
スキルポイント:28ポイント
取得可能スキル:挑発、武器回収、工作、観察力
称号:遅咲きのラッキースター、挑戦者、方向音痴、天籟の鐘を初めて鳴らした者
所持金:677G(預金:9900G)
装備:麦わら帽子、軍手、見習いのシャツ、見習いのズボン、見習いのブーツ、初心者用投擲ナイフ×3、どんぐりネックレス、花柄エプロン、エルダートレントの棍棒
持ち物:初級ハイポーション×5、初級マナポーション×5、初心者用裁縫セット、水袋、火打ち石、ギルドカード(F)→(E)、葉っぱ×6、小石×22、木ノ実×8、体力草×8、魔力草×12、メモ紙、ペン、きゅうり×3、ミニトマト×20、ハニービーの毒針×5、ハニービーの羽×40、はちみつ3瓶、ローヤルゼリー1瓶、軍手(予備)、収穫用ハサミ
販売所(0/10):(金庫:8100G)
◆ ◆ ◆
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