第11話 畑


 「さて、これでいいはずじゃ。リリー、試しにその作物を持ってみろ」

 「グランツさん……本当に大丈夫ですよね?」

 「うむ……多分な」


 多分って……


 「じゃあ、いきますよ……えいっ」


 作物に触れながら案山子さんを確認すると……微動だにしていない。これって成功?


 「どうやら大丈夫みたいね」

 「うむ、成功じゃな」

 「よかった……はぁー、緊張したー!そういえば気になってたんですけど、街の中なのに魔物よけの効果がある案山子さんって……」

 「ああ、それはね……うちの畑の端は街の端っこに位置してるのよ。一応塀はあるけど時々それを超えてくることもあるから念のためよ」

 「へー」


 ……ん?あれ、街ってセーフティエリアでモンスターは出現しないんじゃなかったっけ?うーん……ま、いっか。動物よけも兼ねてるはずだし考えてもわかんないや。


 「うむ、じゃ戻るかの」

 「はい」


 また息を切らしながら家に戻った。何でこんなに歩くスピードが違うんだろう……


 「はぁっ、はあっ……」

 「時間も時間だし、先にお昼にしましょう」

 「……そうじゃな」

 「わーい」


 うん、案山子さんのところに行って帰るだけでお昼になったのはわたしのせいだね……もっと早く歩かないと。いっそ走る?でも体力が持たなそう……わたし長距離より短距離の方が得意だし。あ、どちらかといえばってだけで運動神経はあんまり良くないよ?


 おいしいお昼を食べさせてもらったので、次は畑仕事だー。食事分は働かねばっ!


 「リリー……まずは畑の雑草を抜いて、石も端に避けておくんじゃ……わしはあっちで作業しているから終わったら声をかけてくれ」

 「はい!頑張りますっ」

 

 グランツさんに分けてもらった畑は大体畳2枚分くらいだ。うん、うちには和室があるからね!そのくらいだよ!


 グランツさんの姿はあっという間に小さくなった……うん、さっきのはあれでもわたしに合わせてくれてたんだねー。


 「よし、やるぞー!」


 まずは畑の雑草を抜く。うん、ついでに鑑定しまくる。全部雑草だった。家畜が好むらしいのでまとめて置いておこう。

 次は石を拾って端に寄せておこうかと思ったけど結構たくさんあるから畑を囲ってみた……疲れた。

 もちろん石も鑑定したけど、ただの石(大)とかただの石(中)とか小石ばっかりだったよ。あ、でも鑑定はMPを消費しないみたい。MPを気にしなくていいのは楽ちんだね……


 「ふぅ……終わったー」


ピコン!

 〈スキル:鑑定がレベルアップしました〉


 「あれ、レベルアップ?おおー、一生懸命鑑定したかいがあるねっ」


 ふっふっふっ……これで5ポイント節約だぜ!わーい!


 「グランツさーん!終わりましたー」


 グランツさんがくるまで休憩……バーバラさんから貰った麦わら帽子と軍手もすごくいい……あとでもう1度お礼しよーっと。


 「ふむ……なかなか早かったの」

 「そうですか?ありがとうございます」

 「次はクワで畑を耕すんじゃ……クワは倉庫にあるでの」

 「わかりました」

 「ある程度、耕したら畝を作るんじゃぞ?」

 

 畝……あー、はいはい。テレビで見たことある!


 「はい!」


 グランツさんが仕事に戻ったので、わたしも頑張ってクワを振るう。


 「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」


 時々体を伸ばしつつ、ただただ無心で作業を進め畝を作った。


 「で、できた……」


 ようやく畑らしくなってきてやりきった感に浸っていると……


 「あら、リリーちゃん頑張ってるわね」

 「バーバラさん……」

 「畝ができたなら苗を植えてみたら?」

 「はっ、そうでしたっ」


 苗のことすっかり忘れてたよ……

 ようやくできた畝に苗を植えていく……といってもミニトマトの苗は5つほどだから間隔をあけて植えてもまだまだ畑に余裕はある……


 「次は水やりだよね?」


 倉庫に入ってジョウロを探す……あ、あった!


 「って、重っ!」


 そっかー、ジョウロもプラスチックとかじゃないのかぁ……


 井戸から水を汲んで……ひと口。うまー。残りはジョウロに入れミニトマトの苗に水をあげる……


 「ふぅ……これで終わりかな」

 「うむ、よくやったの」

 「うわっ!びっくりしたー。グランツさんいつの間にっ」

 「ん?リリーが井戸の水を飲んでたところからじゃが?」


 だいぶ前からだったー……


 「集中してたんでな、バーバラと見学しておったわ」

 「えっ、バーバラさんも見てたんですかっ」

 「ええ、あんまりにも真剣にお水をあげてるものだから……」


 あ、いやぁ、そのー……ジョウロが重たくて落とさないように必死だったんだけど……それは言わないでおこう。


 「そうじゃな。明日からはリリーに水やりを手伝ってもらうかの」

 「明日……ですか?」

 「ええ、もう日が暮れるから……」

 「えっ……」


 そう言われてあたりが薄暗いことに気づく……どんだけ集中してたんだよー。


 バーバラさん特製のあったかいご飯を食べてから離れの部屋で一旦ログアウト。


 軽いストレッチをすませ、クールタイムもあるのでリアルでもお昼を作って食べたらあっという間に時間が過ぎていった。

 うん、ゲーム内ではいくら食べても太らないし、気にせずたくさん食べられるっていいよねー。



◆ ◆ ◆


名前:リリー

種族:人間

性別:女性

状態:正常

種族レベル:Lv1

HP:32/40 

MP:40/40

STR:5(+2)

VIT:5

INT:5

AGI:5

DEX:80

LUC:777(固定)

ステータスポイント:0ポイント

職業:農家見習い Lv1

スキル:鑑定Lv1→ Lv2、裁縫Lv1、採取Lv1、栽培Lv1、投擲Lv1

スキルポイント:45ポイント

称号:遅咲きのラッキースター

所持金:7777G

装備:麦わら帽子、軍手、見習いのシャツ、見習いのズボン、見習いのブーツ、初心者用投擲ナイフ×3

持ち物:初級ハイポーション×5、初級マナポーション×5、初心者用裁縫セット、ロープ、水袋、火打ち石、ギルドカード(F)


◆ ◆ ◆


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