第7話 寝床げっと?


 野菜たっぷりのスープと香草ステーキ、サラダ、温かいパン……うわーゲームとは思えないほどリアルだ。


 もぐもぐ……


 何この野菜!バーバラさんの料理の腕をのぞいても美味しすぎっ!


 「すっごく美味しいです!」

 「そうか?」

 「はい!野菜もバーバラさんの料理もすっごく美味しいです!」

 「あらあら……」

 「で、リリー……どうしてわしの畑にいたんじゃ?」

 「わたし今日がはじめてだったんですけど、職業を農家にすると畑と小屋が貸し出されるってナビさんに聞いたんです」

 「ナビさん?」

 「ああ、最初にいろいろ教えてくれた……いわば案内人ですかね?」

 「そうなのね……」

 「うむ、確かに農家にそのような仕組みはあるぞ……あまり利用されていないが」


 へー、グランツさんも知ってることなんだ。あまり利用されてないってことは農家を選んだプレイヤーはみんな苦労して農地を自力でゲットしてるのかぁ。もしくは農家自体が少ないのかなぁ……


 「で、ですねー……ナビさんに送り出されたら畑の真ん中だったんです」

 「ふむ……そうか」

 「はい。とりあえず歩こうって頑張ってたら遠くに人影が見えてですねー……人だと思って案山子さんに話しかけちゃったんですよー」

 「あら……」

 「ほう」


 うわっ、このジュース美味ー……


 「で、休憩がてら案山子さんを鑑定させてもらったら……ぐるぐるした後追い出されるってなってたんで追い出されたら人に会えるかなーって」

 「まぁ、面白い子ね」

 「うむ……」

 「職業は農家見習いなんですけど……いずれはお洋服も作りたくてー……でもまずは畑を探さないと……農家としては何もできませんね」

 「そうか」


 グランツさんバーバラさんとなんやかんや話していると外はすっかり暗くなっていた。どうしよう……そこらへんでログアウトしたらいいのかな?多分、街中だし……セーフティエリアだよね?


 「そうだわ、リリーちゃん今日は泊まっていきなさい」

 「でも……」

 「いいのよ、どうせ離れは空いてるし……」


 どうも本来はグランツさんの弟子になる人用の離れらしいけど、キツくて逃げ出す人も多いとかで今は空いているらしい。


 「そうじゃな……リリーは農家見習いなんじゃろう?今後も畑を手伝うなら家に泊めてやろう」

 「いいんですか?」

 「ふむ。わしの畑に来たのも何かの縁じゃ……ただし甘くないぞ?」

 「はい!わたし、初心者ですが……色々とよろしくお願いします!」


 というわけで寝床げっとだ!わーい!


 「じゃあ、ついてきて……」

 「あっ、バーバラさん待って!お片づけしてないから……」

 「そうだったわね……じゃあお願いしようかしら」

 「はい!」


 わからないことはバーバラさんに聞きつつお皿を下げ、食器を洗いテーブルを拭いた。


 「リリーちゃんこのくらいでいいわ。ありがとう」

 「ふむ……これからもそうやって手伝うならまかない付きにしてやるのもありかの?」

 「ええ、そうね」

 

 毎日美味しいご飯が食べられるの?……じゅるり


 「ありがとうございますっ」

 「それじゃあ、今度こそ離れに案内するわね」

 「はい!」


 案内された離れは小さいけれどベットもタンスもテーブル、椅子もある綺麗な部屋だった。


 「この部屋はリリーちゃんの好きに使ってちょうだい。外の井戸も使って構わないけど、落ちないように気をつけてね?」

 「はい、ありがとうございますっ」


 あとで井戸の水を水袋に入れておこう。バーバラさんが部屋から出て行くと……


ピコン!

 〈グランツの農場(離れ)をホームに設定しますか?Yes or No〉


 「ん……ホームって?」


 宿屋だとログアウトしますかって出るんじゃないの?

 ん?ということは……グランツさんの農場はナビさんの言ってた最初に農地と簡単な小屋が貸し出され、いずれ買い取ったり改装が可能ってやつなの?

 さすがに買取はできないだろうけど……今も借りられたからそうなのかも。でもさぁ、それにしても豪華すぎだよね?納屋みたいな小屋がもらえると思ってたんだけど……んー、それもランダムになってるのかなー?

 そういえば、小屋をホームに設定するとログアウトやリスポーン地点に登録できるってナビさんも言ってたなぁ……この部屋をホームに設定していいのかな?


 「ま、いっかー。できなかったらシステムに弾かれるでしょ……多分」


 決して考えるのがめんどうになったわけじゃ……ない、よ?

 とりあえずYesを選択してみる。


 〈グランツの農場(離れ)をホームに設定しました。この登録はいつでも変更できます。ホームをリスポーン地点に登録する場合はメニューより設定してください〉


 「おおー、なんか出来たっぽい……リスポーン地点ってなんだっけ?確か……死に戻りした時、普通は教会で復活するのをホームでできるとかそんなやつだよね?」


 そもそも教会の場所知らないし、迷子になって戻れなくなったら困るからここをリスポーン地点に登録しておく。


 「よし、できた!」


 ちょうどタイマーをセットした時間だったので、ベッドに横になりログアウトを選択すると視界が暗転し自分の部屋に戻っていた。


 「月曜日、茉由ちゃんに報告しよーっと」



◆ ◆ ◆


名前:リリー

種族:人間

性別:女性

状態:正常

種族レベル:Lv1

HP:40/40 

MP:40/40

STR:5(+2)

VIT:5

INT:5

AGI:5

DEX:80

LUC:777(固定)

ステータスポイント:0ポイント

職業:農家見習い Lv1

スキル:鑑定Lv1、裁縫Lv1、採取Lv1、栽培Lv1、投擲Lv1

スキルポイント:45ポイント

称号:遅咲きのラッキースター

所持金:8777G

装備:見習いのシャツ、見習いのズボン、見習いのブーツ、初心者用投擲ナイフ×3

持ち物:初級ハイポーション×5、初級マナポーション×5、初心者用裁縫セット、ロープ、水袋、火打ち石


◆ ◆ ◆



 

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